<派遣会社の品格>
人材派遣業に対する批判は長らく存在していましたが、数年前に一部企業のずさんな管理実態や一部経営者のスキャンダルが報じられたことをきっかけに一段と加熱し、規制強化を求める世論が形成されました。しかし、政局の混乱で法改正が遅れ、リーマン・ショック以降の企業収益悪化もあって規制強化は結局小幅なものにとどまりました。数年間にわたって現実を見ない議論が飛び交う中、一貫して自社の存立基盤について考え、筋の通った経営を続けてきたのがWDBホールディングス(2475)です。
同社の主力事業は理化学系の研究開発分野における補助者の人材派遣です。派遣スタッフには一定の知識・技術が求められ、稼動スタッフの約3分の1は大学院卒業者です。基本的には仕事がある時のみ給与が発生する登録制を採っていますが、新卒者については同社子会社の正社員として常用雇用とし顧客に派遣する形態も併用しています。
同社は、キャリアアップにおいて派遣という働き方に限界があることを隠していません。既存のスキルを生かして一般事務+αの収入を得たい人にとっては満足のゆく就業機会の提供となりえますが、正社員として責任を持って研究テーマに取り組みたい人にとっては不本意な就職先となりかねないことをホームページ等で明言しています。その上で、キャリアアップの機会を少しでも確保するために、M&Aで独自の研究開発を行う事業会社をグループ内に納めたり、ビジネススクール的な授業を行う社内大学を設置するといった施策も行なっています。
同社の派遣料金は、競合である総合人材派遣会社の研究職部門に比べ若干高めに設定されている模様です。しかし、人材の質の高さや層の厚さが評価され、業績は堅調に拡大しています。現実を見ない空理空論ではなく、研究補助者を社外に求める企業と必ずしも希望する仕事に就けない求職者の間で一定の質を保った雇用機会を創出していることは、素直に評価すべきことと考えます。
WDB HDは技術職系の人材派遣業です。駅前のビルに事業所があって気にはしていました。受付は早々に閉まってしまうようで開いている所は見たことがないのですが、通用口から社員さんらしき人たちが出入りしているのは度々見かけてます =)。お疲れ様です。
同業他社ですと9744 メイテック、4641 アルプス技研あたりでしょうか。同業他社と比べるとややPERが低いように感じます。
この業種の特徴としては、他の派遣業より単価が高く利益率も高い傾向にあります。また経費は開発費や設備投資への投資が殆ど必要なく、販売管理費の多くは事務系の人件費が主になります。よって、他の業種より安定的にキャッシュが入る傾向にあり、キャッシュリッチかつ高配当です。この業種で注目するべき項目は売上と粗利でしょうか。粗利が下がるようですと警戒が必要です。
真っ先に仕事を切られる業種ですので不況のあおりは受けやすいのですが、人件費の多くは変動費ですので、大きく赤字になることはないでしょう。
ここ数年、派遣労働法改正の動向に注目が集まっていましたが、どうやら大きな変更はなくいつも通りの形式的なザル法っぽい流れです =)。政治的なプロパガンダ的なパフォーマンスにちょくちょく利用されるのですが、実質的に改善される傾向はないようです。むしろ今の日本経済には必要な存在になっていることは間違いないでしょう。
数多の同業他社が存在するのですが、コンプライアンス等の絡みもあって大企業と契約できる派遣業者は限られてくると見ています。M&Aも含めて、成長分野ではないかとヲチしています。
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