<特化戦略に支えられた匠の技>
中堅・ベンチャー企業が内外の大企業に伍して競争するためには、何らかの強みが必要です。特に、量産品の製造業においては、明確な企業戦略のもと大胆な製品の絞り込みを行うことが不可欠と言えます。その好例として、今回は日進工具(6157)を取り上げます。
同社は高度経済成長時代に東京都品川区の町工場からスタートした企業で、三菱マテリアルや住友電工子会社、さらにスウェーデンや米国の老舗が高シェアを有する切削工具業界では後発の存在です。同社は主として部品切削よりも金型の製造に多く用いられるエンドミルというニッチ分野に特化し、大企業に追随して事業基盤を築きました。
バブル崩壊以降、同社は絞り込み戦略をより徹底しました。製品面では、エンドミルの中でも直径6ミリ以下の小径品に特化する戦略を打ち出しました。また体制面では、関東圏の生産拠点をすべて閉鎖し、開発と生産を新鋭の仙台工場に集約しました。小径エンドミルの市場は切削工具の中でも数%に過ぎないことから、上記の老舗企業では必ずしも力が入っている分野ではありません。この分野で最大の競合はOSG(6136)ですが、同社もエンドミルよりは世界的に強みを持つねじ切り工具に注力している感があります。そのような競合環境で、日進工具は小径化に関しては誰にも負けないという姿勢を貫いており、直径10ミクロンまでの製品化を実現しました。まだこういった超小径品が売上高に大きく寄与しているわけではありませんが、ブランド力向上には貢献しており、将来的には医療分野などで大きな需要が生まれる可能性に期待がかかります。
前期は期央の景気鈍化や中国での日本車不買運動といったマイナス要因があったにもかかわらず、通期で増収を維持しました。主力である自動車向け以外で、スマートフォン用の極細コネクターやLEDといった新たな需要が業績を押し上げたと推測されます。日本国内でものづくりを続けていくためにも、より先端分野に特化することは不可欠な戦略と言えるでしょう。
日進工具は、切削工具メーカーですね。ビジネスモデルはBtoBで、工作機械に取り付けられるドリルを製造しています。ドリルは工作機械の中で消耗品の部類に入ります。ある程度使用した後は取り替える必要がありますので製造業としてはストック型ビジネスに近いビジネスになります。工作機械の稼働率が高くなると売り上げが伸びる傾向にあります。
同業他社としては6136 OSG、6278 ユニオンツール、6156 エーワン精密あたりでしょうか。この分野で最もシェアが高いのはタンガロイという非上場企業です。様々な切削工具を用意しており全体では6割近いシェアを持っていたはずです。この企業、かの有名な投資家、バフェットさんが投資している企業としても有名です。
日進工具は、その中でも電子機器に使われる超小型のドリルを製造しています。仙台に工場があり、震災の時はかなり気にしていましたが、思ってたよりは被害を受けなかったようでその後の売上も堅調に伸ばしています。IR活動に積極的で頻繁に決算動画を流しています。経営者もナカナカ面白い人です。
で。
投資先としてはどうかと言われるとナカナカ難しいですかねえ。配当もそんなに悪くはないんですが、やっぱり日本の製造業を俯瞰した時に環境が恵まれているとはいいがたく。流動性、かなり悪いってのもアレですよね。
や、嫌いじゃないんですよええ。