2016年12月31日土曜日

今日の雑談 (12/30)

株主として補助金を利益として計上するのはどうなんだろうな、と悩むわけなんですわ


ことし倒産した介護関連の事業者は先月末までですでに全国で97件と過去最多となったことがわかり、調査に当たった民間の信用調査会社は「介護報酬の引き下げや深刻な人手不足が影響しているのではないか」と分析しています。
-- ことし倒産した介護関連事業者 過去最多に | NHKニュース

newspicksのコメントを読んでいて、分かっている人とそうでない人がくっきり別れていて興味深いなど。ケアサービスの福原さんが的を射ているのですが、お茶を濁しながら説明をしているので気が付かれないかもしれないな、とは思った。

私は、政府からの補助金の配り方が資本社会にマッチしていない、というのが結論です。


  • 何故賃金が上がりにくいのか?
    生産性が低いからです。生産性が低いと賃金が上がらない理由については、ゴッドランドの経済学 - 山形浩生の「経済のトリセツ」を読んでください。
    介護士の生産性を上げるなら、請け負う顧客の数を増やすか、顧客から貰う賃金を増やす必要があります。前者は、例えば設備投資によって介護の現場を楽にするやり方が一般的ですが、中小企業ではその費用を捻出するのは難しいでしょう。後者は政府の補助金に頼る限り難しいです。
  • 経営者の質が低いのでは?
    高くはないです。せいぜいラーメン屋の店主程度の能力でしょう。
    参入障壁が低いのが原因でしょう。労働者の質は高くある必要があるのですが、経営者はそうではありません。この点は中小企業の人材派遣の経営者とノリが同じです。
    規模が小さい内は、補助金のお陰で乗り切れることが多いのも参入障壁が低い理由でしょう。ここでうっかりゴージャスな介護用自動車を買ったりしたりしようものなら、借金返済で首が回らなくなり倒産まっしぐらってこともあるわけです。補助金に依存していようものなら、補助金が減額されただけで手のうちようが無くなります。
  • 補助金増やせば解決するのでは?
    中途半端な補助金の増加は多分、状況が悪化します。
    おカネを湯水のように使っていいのなら、この手の事業を全て公務員化すればいい。多分、政府が破綻するとは思いますが =)。
    補助金を高くすると、その補助金目当てに起業する事業者が群がります。やってることは人材派遣と大して変わりませんからね。競合が増えると人件費に費やす費用が増えます。人材の奪い合いですね。そのため労働環境を向上させるための費用が不足し、人件費だけのギリギリの経営になります。まあしっかり役員報酬も貰ってはいるんですがね。
    ここで問題になるのは補助金の配り方でして、人頭とサービスに対して支払われるのですが、ある程度の規模になると削られます。補助金目当てだと規模を大きくするメリットがあまりなく、赤字ギリギリのぬるま湯経営になりがちです。で、補助金が削られるだけで経営が成り立たなくなります。
    厚労省も酷いもので、ちょいちょい補助金で設備投資を促すのですが、税収が悪化すると急に補助金を削ってしまうことが多く、経営者に対する梯子外しが横行しており、容易に設備投資が行えない話も聞いています。


昨日だったかNP上で書店の倒産について、現役の書店経営の方から『書店経営者は財務諸表の読み方を知らなさすぎる』という指摘があったけれども、この件も本質は同じ。
-- 介護職員 給与増加は4人に1人にとどまる

デスヨネー。

数ヶ月前にも同様の内容の記事がありコメントをした記憶がある。
その時も書いたけども、介護事業者のほとんどは在宅介護サービスでほとんどの費用が人件費なので、倒産の仕様がない。つまり、この66件はいわゆる土地や建物を必要とする施設系か無計画に設備投資しちゃった事業者なのだろう。
-- 介護事業者の倒産 過去最多に 

倒産する理由は概ね過剰な融資によるものでしょう。割とよくある補助金の変更で首が回らなくなるってのがあるわけです。

ひとつはデューデリジェンスの難しさとディールサイズが小さいこと。施設系にしても在宅にしても、売り手買い手の双方だけではなく、仲介の金融機関やブティックが介護保険を理解した上で適正価値がつけられるのか。

もうひとつが、介護は各サービスに法令上の人員基準があり、また労働集約型産業なので、売上を伸ばすにはスタッフも同時に増やすことが大前提であること。
そのために、仮にM&Aを打診する場合、相手先のキーパーソンやスタッフがまとまった数辞めてしまうリスクを考えた上でのディスカウントリスクを考慮する必要があります。下手したら、買収したはいいけれど、スタッフがいないので継続できないということだけは避けないといけないわけです。
-- 三重苦に悩む介護業界、再編・合併は進むのか(金子洋文)

サービス業のM&Aでは陥りやすい罠ですよね。去年のエスクリが同じ流れでしたっけ。

サービスが人に依存する事業は、従業員のフットワークが軽いんですね。今の人手不足の環境なら引く手あまたですしね。

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賃金を上げたければ生産性を高めましょう。

生産性を高めるには設備投資が必要不可欠です。この手の補助金を削るのは悪手かと思われるのですが、政府のコスト削減の対象として白羽の矢が刺さることが多くあります。

補助金の配り方を考える時期に来ていると思っています。

資本が分散し、中小企業の居心地がいい環境を維持するというのも雇用面では悪くないのかもしれませんが、生産性は上がりません。規模を大きくし、設備投資によって少人数でもサービスを多くこなせるようになることで、結果的に従業員の方の負担も減り、賃金が上昇します。

タバコ屋やケーブルテレビのように地域独占型にしてしまうやり方もあろうかと思うのですが、この場合、経営者によってサービスの格差が大きく開きます。タバコ屋はせいぜい販売機の数が少なくなる程度ですが、ケーブルテレビのサービスってピンキリじゃないですか。値段が安く、サービスが豊富な地域もあれば、ぜんぜんやる気のない企業が居座って一向にサービスが増えないという地域もあります。

介護ロボのような画期的なアイディアに政府が積極的におカネを投じる、というのはありかな。まあこれも補助金目当てのあんぽんたんが出てきそうだけど、もうこれは社会コストでしょう。

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まあでも補助金のたぐいは何故か人々の悪意と英知が集中する傾向があるのは何とかならないものですかね。ふるさと納税だって、本来使われるべき場所とは程遠いでしょう。

なんというか人類の限界を感じますわ。

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