4369 トリケミカル研究所
<息の長い研究開発>
半導体業界の技術進歩は日進月歩で続いていますが、それを支える材料業界の進歩の速度は分野によってまちまちです。回路パターンの焼き付けに用いるフォトレジストは線幅が細くなるごとに大企業間で熾烈な競争が行われていますが、焼き付け後の回路形成に用いる各種ガスについてはそう頻繁に製品変更は行われません。それでも、技術的要求が厳しくなるにつれて新材料が要求されるケースは、分野ごとに数年、または十数年の間隔で発生します。現在そういった局面を迎えていると見られるのがトリケミカル研究所(4369)です。
同社は1978年に創業されたベンチャー企業で、電子部品業界で用いられる特殊ガスに特化して研究開発を進めてきました。最初の需要先は旧・日本電電公社(現在の日本電信電話)が研究開発を進めていた光ファイバーで、半導体に参入したのは1984年です。近年では化合物系太陽電池メーカーも主要顧客となっています。
かつて、半導体の次世代材料に関しては、市場拡大を期待した大手化学メーカーが多く参入しました。しかし、性能は優れていても高価かつ知見の少ない新材料が用いられるケースは少なく、思ったほど市場は拡大しませんでした。それらの企業の多くは他分野に経営資源を移している模様で、2008年から同社と提携していたフォトレジスト大手のJSR(4185)も最近関係を解消しました。
一方、同社は大手化学メーカーと遜色ない賃金を支払いつつ、数度の苦境を乗り越えながら着実に研究開発を続けてきました。その結果、前期からスマートフォン用DRAM向けの絶縁材料の採用が、本格化してきた模様です。スマートフォン用DRAMはパソコン用より高価かつ節電要求が厳しいため、ついに同社の新材料が本格的に採用されたと推測されます。半導体メーカーにとっては、長年研究開発に協力してきた同社から他社にメーカーを切り替えるのは品質面・安定供給面のリスクが大きいため、しばらくは同社の独占供給が続くと期待しています。
半導体産業の特徴として、売れる時は素晴らしい売上があり、規模の経済性が効くので利益が青天井になりやすいのですが、一方で、不景気で売上が落ち込むと設備投資へのコストが膨らみ、一気に赤字になります。
例としては液晶パネルの設備投資を見誤った6753 シャープあたりでしょうか。一度ミソが付くと一気に資金繰りが悪化しますので、手元に現金を多く持っておく企業が多い特徴もあります。6502 東芝は、ズルをしてでも財務悪化を知られたくなかった原因の一つでしょう。ズルに対しての罰がどの程度が適当なのか、注目したいところです。
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10月にJSRとの資本提携を解消し株が放出されており、直近の市場環境はあまり状況がよくないようです。3Q決算では上方修正は無かったものの、大きく利益を伸ばしています。
いつものB/Sの確認。GMOクリック証券の財務分析より。
1/3以上は固定資産ですね。製造設備を自社で持っているからでしょう。3Q決算をみると、更に機械・建物への投資を増やしていますので、確実に生産能力は上がっているでしょう。需要に応じた設備投資ならイケる感じは受けました。
同じく半導体素材を開発している4973 日本高純度化学のB/Sをみてみましょう。
殆ど現金で構成されているのが分かるでしょうか。
この銘柄はファブレスといって自社に生産設備を持たない、素材開発のみを行っている企業なのです。設備投資が殆ど必要ないので利益が溜まりやすく効率的な経営が出来るのです。
生産と開発を分離する経営というのは最近の主流なので注意してみてください。
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纏めると、今回の設備投資がばっちりハマって、新規素材がバンバン売れるようになるとするなら、来期はかなり期待できるのはないでしょうか。ただ今期3Q決算の時点で上方修正を行わないところをみると、業績予想に対して保守的にみているのかもしれないので、その点は差し引いたほうがいいかもしれません。
まあでも売れないとなると後のシャープと同様の状況になりますし、自社で設備を持っているのなら尚更です。ファブレスだったら面白かったと思うんですが、小口ロット生産をウリにしているっぽいので、そうなると外注も難しいのかもしれません。
半導体素材は数年で時代遅れになることもよくあることなので、難しい投資になろうかと。
- (株)トリケミカル研究所 - マイナビ2016
こいうときは求人情報のほうがわかりやすく事業を説明していることが多いよね。
- http://www.daiwasbi.co.jp/products/search/fund/pdf/20151030_kogataSB37M.pdf
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