2012年7月24日火曜日

'12/06の「担当ファンドマネージャーの見方」

大和住銀日本小型株ファンドの月次。6月は化学小型銘柄。

 <原料安効果が期待できる化学小型銘柄>
化学工業は極めて裾野の広い業界です。原料の大部分は原油を精製して得られるナフサですが、そこから長い工程を経て様々な最終製品が製造されます。川上の工程は生産量が大きいため大企業が担っていますが、川下の工程になればなるほど製品は分化され生産量が小さくなるため、市場規模が特に大きい医薬品と電子材料を除くと中堅・中小企業の活躍する余地が大きくなっています。
原油価格が上昇すると、ナフサやエチレンなど川上製品の価格はほぼ連動して上がりますが、川下へ行くほど顧客との個別交渉が制約条件として働き、価格は上がりにくく、値上げのタイミングも遅くなりがちです。リーマン・ショック後、世界景気が回復に向かう過程においては、原油価格が継続的に上昇したため、川下製品を担う化学小型銘柄の多くは収益が圧迫された状態にありました。
しかし、欧州債務危機の深刻化により、資源価格上昇の流れは明らかに変わりました。加えてここ十数年間、世界の資源消費増加の大きな部分を占め続けてきた中国経済の変質もあり、今後は原油をはじめとする資源価格が大きく下がる可能性もあります。更に世界景気悪化による稼働率低下を受け、川上製品の価格が資源価格より大きく下がる可能性もあります。
こういった観点から、当ファンドでは比較的安定した需要分野を持つ化学メーカーに幅広く投資しています。具体的には、果実酸や研磨剤を製造する扶桑化学工業(4368)、住宅用塗料のトップ企業であるエスケー化研(4628)、紫外線硬化型インキに強みを持つT&K TOKA(4636)、土木用プラスチック資材を幅広く手がける萩原工業(7856)などです。

化学小型銘柄は割安感があるので私も注目しています。今回取り上げられた銘柄は以下の通り。

  • 4368 扶桑化学工業
    リンゴ酸のシェア高い(世界シェア5割)。リンゴ酸から派生しているウェハ研磨剤の材料の利益率が高い。半導体消耗品。納品先は5384フジミインコが主。フジミインコの売上が伸びればここの利益が伸びる傾向にある。
  • 4628 エスケー化研
    建材材料。化学系にしてはかなりの利益率。安定した売上が魅力。とても興味深いのだが、単元が1000株単位で1単元買うのに300マソ程度掛かるのと、売買が殆ど行われておらず流動性皆無なことなのがネック。単元変えてくれないかねえ。株主増加は安定した評価にも繋がるわけだし、株主を無視する方向はどうなんだろ。割安銘柄にはそいう銘柄、結構多いんだけどさ。
  • 4636 ティーアンドケイ東華
    UVインクでシェアが高い。UVインクは立体的な印刷を行うための素材で、各社がプリンタを出してきている。UV印刷自体は何かこう、かさぶたのような感じでインクが固まって乗っかっている雰囲気。最近の新規技術なので流行ると面白いかも。
  • 7856 萩原工業
    建材材料。震災特需発生。リチウム電池関連銘柄とも。

エスケー化研以外は全部触ったことがある =)。

化学小型銘柄の特徴としては、やはり原料価格に利益が左右され、景気動向で売上が左右される傾向にあります。所謂、景気敏感株、シクリカル銘柄の代表です。その中でも上記で取り上げられている銘柄は、独自性のある製品を開発しており、シェアが高く、競争力が高いので「ある程度は」強いビジネスが展開できています。「ある程度」としたのはやはりBtoBがメインなので、川下の状況で値下げせざるを得ない状況は多々発生します。

弄り方としては川下の景況感が重要になろうかと思います。例えばUVインクならUVプリンタを開発している6789ローランドDG、7999MUTOH HD、6638ミマキエンジの消耗品の売れ行きをヲチすると良いかもしれません。扶桑化学なら納入先の5384フジミインコの売上と業績予想を参考にする。こんな感じである程度先が読めます。

先が読めてもその通り株価が動くかと言うと、そうでもないのが寂しいところなんですが =)。シクリカルセクターにあることを認識し、全体の景気が上向いた感じを受けてから検討しても結構間に合うことが多いと思うのですが、いかがでしょうか。

他に化学銘柄を挙げるなら以下の銘柄。

  • 4956 コニシ
    建材材料である接着剤が主。商品名「ボンド」が有名。震災特需有。製造から商社まで一体になっているのが特徴。製造の利益と商社の売上が合算されやや残念な会計になっているのですが、これも事業の特徴とも言えましょう。社長が変わってからあまりヲチをしていない。
  • 5018 MORESCO
    自動車用潤滑油が主。数多くの製品を開発しており売上も順調に伸びてきている。原料に対する利益率の変動が高いので、競争力はやや劣るのかもしれない。電池銘柄とも。
  • 4620 藤倉化成
    自動車塗装と電子部品材料が主。機能化学の中ではポートフォリオは広め。世界へ各拠点を作っている最中。為替の影響を受けるか。
  • 4966 上村工業
    電子部品材料のめっき材が主。 現金持ちすぎ。iPhone/iPad関連銘柄。

こんなとこかな。

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