2017年9月9日土曜日

2483 翻訳センター - '17/05の「担当ファンドマネージャーの見方」

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2483 翻訳センター


翻訳センターは、翻訳サービスを提供する企業です。四季報の同業他社にクレステック[7812]ロゼッタ[6182]シイエム・シイ[2185]


<まだまだ人工知能には負けません>

昨今の人工知能に関する議論は、かなり上滑りしたものが多いと感じています。確かに、学習するに値するデータが豊富に公表され、かつ結果の評価体系が明快な囲碁・将棋などの分野では、コンピューターがトッププロを一気に凌駕してしまいました。しかし、世の中の大半の分野は、公表されたデータが貧弱であったり、その質が劣悪であったり、結果の評価体系が複雑であったりして、機械学習が十分な成果を上げにくい領域なのです。今回は、機械学習に比較的適した分野であるにもかかわらず、まだまだプロの仕事が必要な分野として翻訳を取り上げます。

近年の機械翻訳、特にグーグルの技術進歩は目覚ましく、かなり違和感の少ない翻訳が無料で得られるようになりました。同社がトップランナーであることは、学習するデータの量が何よりも重要であることを示唆しています。しかし、現在プロによる翻訳が高額な対価で行われている、質を重視する分野に関しては、その能力はまだ及ばない状況のようです。

翻訳センター(2483)は翻訳業界大手の一角で、とくに特許・医療・工業・金融の4分野に強みを持っています。同社は業務合理化を目的として、古くから機械翻訳の研究を行なってきました。技術進歩に伴い、同社も業務委託を行なっているプロの翻訳者向けに下訳用のツール提供を始めています。しかし、下訳用というレベルを超える高い品質の実現が見えているのは、今のところ特許関連だけのようです。特許関連の文章は表現が無機質で、公開に至ったものは全てデータベース化されており、海外との対照関係も明確な極めて機械学習向けの分野であり、その他の分野に関しては技術進歩によって同社の存在価値が失われることを心配する必要はないと判断しています。

ちなみに、小型株投資に関しても、機械学習が成果を上げるのは難しいと思っています。分析に利用可能な情報がデータベースとして全く網羅されていないことや、自己の取引が市場に与える影響を分析することが極めて困難であることなどがその理由です。

翻訳作業は、真っ先に人工知能に取って代わられる事業として注目されています。人工知能により翻訳者の作業効率が上がり、支払われる対価も減少していくことでしょう。

とはいえ。

翻訳センターは、上記の記事の通り、業務に精通している必要があります。例えば特許の翻訳の場合、ニュアンスひとつで権利の価値がガラッと変わるものでして、ミスが許されません。医療の場合、人の生命に関わることなので細心の注意が必要です。何気ない単語でもその国にとっては禁忌であったりするので、責任問題が生じるような翻訳業務では人の判断が必要とされています。

日本が海外で販売網を広げるには重要な事業であり続けるでしょう。

今後の課題としては、やはり人材確保になるのでしょう。平均年収が450万円程度ですので、やや厳しい状況かもしれません。上記で効率化の話をしましたが、翻訳作業自体は人が行う必要があるので、仕事量に限界があります。つまり人数が売上に比例する労働集約型ビジネスと言えるでしょう。人材不足の中、逆風であるのは間違いないでしょう。

以前、グレイステクノロジー[6541]を取り上げましたが、同じ事業でも利益率が高いことに特徴があります。翻訳作業やマニュアル作成は下請けに依頼し、彼ら自身はマニュアルを閲覧するためのシステムを提供することに特化したことにあります。翻訳作業には人手が要りますが、システム構築にはある程度の開発者がいれば運用可能です。この手のサービスを翻訳サービスでもやれば面白い展開が期待できるんですけどね。

中国関連銘柄という性格もあります。翻訳事業ですので、英語以外にも様々な言語を扱っているのですが、単価は英語よりも中国語の方がずっと高いんだそうです。英語だとプレイヤーが多く競争が激しいというのもあるんでしょうね。国内企業が中国への輸出を増やすタイミングで注目するのも案外、面白いかもしれません。


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