2014年11月5日水曜日

ひふみ投信「第6期 運用報告書」を眺めてみる

ひふみ投信 | レオス・キャピタルワークス株式会社 | ひふみ投信情報

上記のページの一番下のページから入手できます。分かりにくいですね。運用報告書は年1回、投資信託が受益者向けに提出するレポートです。月次レポートとは異なり、法で定められた資料になります。今回はこの運用報告書を俯瞰し、ファンドの特性を説明していこうかと思ってます。


今期の運用報告書については上記のサイトで解説されてますので、それを補完する形をとっていきます。


マザーファンドとベビーファンド


ひふみ投信は、「ひふみ投信マザーファンド」を100%組入れた投資信託になります。このような複雑な体制になったのはひふみ投信の他にひふみプラスという投資信託を開発したためです。ひふみプラスは、証券会社を通じて販売されている投資信託でこの投資信託も「ひふみ投信マザーファンド」を100%組入れています。

ファンド・オブ・ファンズではなくファミリーファンド方式を取っているのでコスト面で不利と言うことはないです。

ひふみ投信とひふみプラスでは若干運用にズレが生じる時があるのですが運用上、どうしても生じてしまうらしく、どっちが有利と言う訳ではないらしいのでまあ、気にしなくて大丈夫かと思います。



TOPIXを上回る運用益と分配金0円



今期は+24.4%とTOPIXを上回っている成績を収めています。

とはいってもひふみ投信ではあくまで年内の運用益に拘っているようですので、11~12月を含めてTOPIXに勝てる事で完全勝利と言えましょう。ファンドの受賞も年内の成績が基準になりますし。

分配金は、一度も出したことはありません。

勘違いする人が多いのですが、投資信託の分配金は株の配当金とは異なります。運用中に取得した株の配当金は、投資信託の運用資産に含まれます。運用資産が増える訳ですから、運用が好調ならより運用資産を増やすことになります。資産運用で重要視される複利効果が発生します。

分配金を受け取る事で運用資産を減らす効果はあります。運用が低調なら受け取った方が良い場合もあるでしょう。ただ好調を持続してくれることが期待できるのなら、分配金は受け取らない方が複利効果を得る事が出来る分、有利です。

長期運用では、分配金を受け取らない方がより多くのチャンスを得るのではないかと思います。私は分配金0円を支持します。


費用について


ひふみ投信の信託報酬は1.0584%と定められています。

この他に株売買で使われる費用が意外と大きい投資信託があるので注意が必要です。このコストは信託報酬とは別に受益者が支払うコストになります。


この+0.258%の費用は大きいのか小さいのか。

インデックス運用で人気が高い(らしい)eMAXIS TOPIXインデックスと比較してみます。


eMAXISが特別優秀という訳ではなく、インデックスファンド全般の特徴です。インデックスファンドは組み入れ銘柄を積極的に売買する事がありません。組み入れ比率が変わるタイミングでやや売買が行われる程度です。売買コストと言う点では他の投資信託より有利であるといえましょう。

ひふみ投信はアクティブファンドの中でも売買回数が多いファンドかと思われます。売買回数が増えることは一般的には不利です。何故ならその分のコストが確実にマイナスになるからです。

一応、頭に入れておいた方がいいでしょう。このファンドの特徴です。


売買高比率と売買回転率


一応、言っておくけど売買高比率と売買回転率は違うからね。


売買高比率は、株売買金額の合計から時価総額を割ったものです。一方、売買回転率は、株の買付もしくは売付の小さい数値と時価総額を割ったものです。

一般的に余程の資金流入がなければ買付と売付はほぼ同じ金額になるので

売買回転率≒売買高比率÷2

と計算して間違いないでしょう。

保有株を全部売って、全部買うと売買回転率は1になります。

売買回転率が大きくなると言う事は、売買回数が多い事を意味します。売買回数が多いと言う事は売買手数料が増えることになります。投資信託の運用規模が大きい企業ほど売買手数料が軽減されることが多いようです。自社内で一括で売買を行ったり自社内で売買したりするからかと考えられます。

売買高比率を俯瞰してみます。


  • 第6期:1.69
  • 第5期:3.32
  • 第4期:1.61~1.18 (ファミリーファンド方式への切り替え時期)
  • 第3期:3.79
  • 第2期:3.06
  • 第1期:3.91


今期は左程、売買をしていないようです。とはいえインデックスファンドは大体0.2もあれば売買が多い方ですし、アクティブファンドでも指折りの売買代金かと思われます。

売買代金の過多で有利不利はありませんが、コスト面で確実に不利になることは前にも言った通りです。チャンスを確実にものに出来ないようですと、コストで確実に不利です。


基準価額の大小


基準価額の大小は運用に全く関係ないですからね、念の為。

どうも「高くなったら安くなるのが世の掟。天井掴みは嫌じゃあ」と考える投資家が多いようです。基準価額は過去の成績で、今後の成績を示唆する訳ではないです。基準価額が小さいから運用で有利になる事は当然ありません。

基準価額が大きくなると購入できる口数が少なくなるだけです。精々、初期から持ってる奴らから比べると、同じ口数を購入するにも倍のコストが掛かる、悔しいビクンビクンって事かと思うんですが、これはもう仕方ないよ。

投資はタイミングだ =)


TOPIXへのクリンチの話


当時、このクリンチに際しては私も驚きましたよ。ただこの運用方法はひふみ投信らしさが出ていると感じました。

ひふみ投信は、TOPIXに勝ち、定期預金に勝ち、ライバルに勝つことを目標としています。得意とする中小型株だけでこの目標をクリアする事は出来ません。何故なら、株式市場というのは時に、大きなマネーが流入してくることがあり、この場合、必ず大型株から反映されます。中小型株に反映されるには数か月から半年以上の時間が必要になります。

大きなマネーの流れを無視する運用はひふみ投信らしくありません。ひふみ投信は市場との対話を重要視しているからです。相場の流れを無視する事は、受益者の利益にならないと判断したからこそ、TOPIXへのクリンチを敢行したのでしょう。受益者の利益のためなら何でもやる、という表れでしょう。運用は悪くなく、きっちりTOPIXに付いていくことが出来ましたし、大きく受益者の利益を損ねる運用ではないと私は判断しています。

ちなみにこの大型株へのスイッチは、クリンチの時ほどではないですが時折実行してます。三菱シリーズ(8306 三菱UFJ8058 三菱商事8802 三菱地所)や7203 トヨタ自動車が組み入れ銘柄上位に出てくることがあれば「またやってやがる」とニヤニヤ観察していただければ =)。

投資信託の運用資産が大きくなるにつれ、中小型株を組み入れにくくなる場合も増えてくるかもしれません。中小型株に流入できる資産と言うのは限られていまして、投資信託が集中的に資金を流入させると自分たちの買いで株価を上げてしまい、容易に売る事が出来なくなります。藤野さんはまだそのフェーズにいないと説明していますが、そうなる場合もある事は頭に入れておいた方がいいでしょう。

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彼らは彼らの酔狂のために運用しているのではないのです。あくまで受益者の利益のため、最も有利になるために行動しているからこうなってるんです。

受益者の利益を大きく損ねたのならガンガン追及してやりましょう、手伝いますよ =)


参考書の紹介など


今回の話は、書籍「これから資産運用をはじめる人の投資信託の基礎知識」で確認しながら書いてます。基礎知識と言う割には内容が込み入っていて実にマニアックな書籍です。ただ資産運用に向いている書籍ではなくあくまで投資信託の知識が手に入るだけなのがアレでしょうか。

いやいい書籍ですよ。

これから資産運用をはじめる人の投資信託の基礎知識
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これ以上の知識となると証券アナリストの問題集あたりを漁るといいかもしれません。法的な話にもなるので更にマニアックになるんですが、それこそ運用には関係ないというw

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