1994 高橋カーテンウォール工業
<残存者利得を享受>
バブル期以来の高収益を享受している建設業界に比べると、建材業界の収益回復は総じて緩やかです。建設労働人口の減少で施工能力がひっ迫していることに対し、材料の方は基本的にピーク時の生産能力が残っているため、厳しい競争が続いていることが理由です。しかし、分野によってはメーカーの淘汰が進み、勝ち残った企業が残存者利得を享受している例もあります。その一つが今回紹介する高橋カーテンウォール工業(1994)です。
同社は高層鉄骨ビルの外壁に用いられるコンクリートカーテンウォールのメーカーで、業界の草創期である1960年代から日本を代表するビルの外壁を手がけ続けてきました。株式公開を果たしたのはバブル期の絶頂である1990年です。上場後の同社をめぐる環境は総じて厳しいものでした。幾度も訪れた不況期には物件数が減少するだけでなく、価格競争も激化しました。その度に競合企業の多くは撤退し、結果として同社のシェアは上昇していきました。2000年前後の同社のシェアは20%前後でしたが、現在は過半を占めるに至っています。
近年の建設需要回復に伴い、同社は積極的に受注価格の値戻しを行い、2014年から営業利益率は二ケタに乗りました。需要先が高層ビルに限られるため個別要因で業績が左右される面はありますが、東京五輪後も建設計画は豊富で、良好な収益環境が続くと予想しています。なにごとも継続が大事とつくづく感じさせられます。
流石は苦瓜さん、渋い所を持ってくる。決算説明資料から抜き出してみる。
主力のPCカーテンウォールは、ビル外装で使用されるらしい。
カーテンウォール自体は糞重いので現場の近くの工場に発注される。輸送費も絡んでくるんでしょう。上図では首都圏、関西圏に近いところに工場があるでよ、という話かと。立地バッチリ。
見どころはやはり高いマーケットシェアでしょう。6割は圧倒的なシェアです。マーケットシェアが高いと価格決定を支配できるので、長期に渡って安定した経営が行えることを表します。
受注状況は好調を維持。
下の方に見逃せない文言があって「注:受注から売上計上まで1~2年程度の期間を要する」と記載されています。ビルの設計自体に時間が掛かるのは当然としても、売上計上に時間がか掛かり過ぎですね。そのためか「未成工事支出金(要は棚卸資産)」の増加に伴い「未成工事受入金(要は前受金)」がしっかり確保できているのは安心材料でしょう。
ちなみに数年掛かるかもしれない棚卸資産が流動資産にカウントされてて問題ないのか調べてみたらどうやら建設業会計という特殊な会計が絡んでいるようです。興味深いですね。
建築資材系の同業他社と比べると、業績の割には株価は低評価であることが多いように感じています。窯業系の建築資材で高いシェアを持っているニチハは、ようやく評価され始めていますが、今後もこの手の同業他社が見直される可能性は高いかもしれません。
都心を中心としたインフラの再構築は始まったばかり、かも。
- IR情報 | 高橋カーテンウォール工業株式会社
IR本拠地。決算説明会資料あり。
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