<フリーペーパーのネタはまだ残っている>
日本で広告を収益源とするフリーペーパーが全盛期を迎えたのは、意外なことに、競合するインターネットも急成長期にあった2000年代の半ばでした。印刷費の低下やIT化による編集効率の改善を背景に、R25のような総合誌や求人・賃貸住宅などの専門誌が数多く創刊され、多数の読者と出稿者を集めていました。しかし、リーマン・ショックによる広告費の削減やスマートフォンの普及によって市場は縮小に転じ、景気回復した現在でも全体的に往年の勢いはありません。そのような状況で、新分野のフリーペーパーと言える広告媒体を伸ばしているのがサイネックス(2376)です。
同社の主力事業は、カラフルさ・紙質の良さ・字の大きさ・軽さなどが特長の地域密着型電話帳「テレパル50」です。地方を中心に全国で1,000万部が発行され、NTTのタウンページと住み分ける形で広告を集めてきました。しかし、2003年の上場後は売上高が頭打ちとなり、成長分野と位置付けたインターネット事業でも、ヤフー路線情報の広告代理や団体旅行では一定の成功を収めたものの、利益率の高い自社媒体は知名度の低さから苦戦を続けてきました。
そういった状況下で、同社再成長のドライバーとなったのが、2007年に開始した行政情報誌事業です。従来は自治体が税金を使って発行していた行政サービスに関する情報誌を、広告の営業権と引き換えに同社が無料で発行するという事業で、7年間で全国464自治体・2,700万世帯をカバーするに至りました。今期には同事業の売上高がテレパル50と肩を並べる見込みです。同社を模倣する企業も現れましたが、テレパル50で培った営業網と自社印刷工場が差別化要因となり、広域で成功する企業は現れていません。テレパル50・行政情報誌とも比較的納期に余裕があるため、自社工場の稼働率は常に高水準を保っており、同社のコスト競争力は圧倒的と言えます。
サイネックスはフリーペーパーとして注目していた時期がありました。優待のQUOカードの要因の一つなんですけどね =)。
上記の説明通り、安価な公共サービスの一環として自治体に売り込んでいるのが功を奏しています。自治体からすればコストを支払う事無くサービスを提供する事が出来、またサイネックスからすれば自治体の名を借りた信用度の高い広告を載せる事が出来る、と。
ただまあ、中身をちょろっと見た感じだとそんなに内容が興味深いものがあった訳でもないですし、ググると分かるんですが、営業がかなりアレらしいです。なので長期で持ちたいか?と言われると疑問でして、PERが一桁台なら未だしも二桁までになると、後はもう優待信者様への奉仕くらいしか策が思い浮かびません。
この辺りは各自の判断ですし多分、株価に反映される要素ではないとは思います。
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フリーペーパーへの回帰というのはちょっとした私の投資テーマでもあります。
フリーペーパーは、無償で配布される情報誌で、掲載される広告が収入源になります。広告の多くは地域に根付いたのが多く、アルバイトなどの求人や飲食店の宣伝などが主になります。ネット広告の流れとは逆のレガシーな媒体なのですが、まだ多くの人が情報誌による情報収集に頼っている状況は左程変わっていないでしょう。
特に、広告最後の砦と言われるローカル広告は未だにテレビや新聞やフリーペーパー等のレガシーな媒体の方が強みが残っています。GoogleやAppleが執拗に位置情報を取りたがるのはこのレガシー広告を制したいがための戦略なのですが、この話はまたいつか。
直近だと、人材確保に出費をせざるを得ない過程で、広告費の増加が見込めるだろうというビジネス環境の良さをかっています。
フリーペーパー関連銘柄を纏めてみました。
- 2376 サイネックス
売上高100億。全国区。わが街辞典、テレパル50 - 4833 ぱど
売上高83億。首都圏中心。 - 2139 中広
売上高63億。岐阜県地盤。 - 2408 KG情報
売上高47億。山陰中心。 - 2341 アルバイトタイムス
売上高44億。静岡中心。 - 2481 タウンニュース社
売上高32億。神奈川地盤。 - 2164 地域新聞社
売上高28億。千葉地盤。 - 4766 ピーエイ
売上高20億。東北中心。
この手の事業は営業がモノを言うようでナカナカ全国区にはなりにくいようです。設備投資の必要性が乏しく、中途半端に儲かるのでM&Aは起こりにくいようです。経営者の成長意欲もあまり高い事業とは言えないでしょう。学習塾と似たビジネスモデルかもしれません。
万年バリュー銘柄特有の特徴ですな =)。
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前に2408 KG情報を投資先から引き揚げた話をしました。
財務はピカイチなんです。が、前期から新規事業と成長戦略を上げたことで粗利が下がっている事、配当を上げたことで財務状況が通常化してしまうことが面白くない、と言うのが理由。特にこの手の事業は設備投資ではなく人員の教育に長い時間を掛けることになります。稼げるようになるには2~3年は必要でしょう。その間、多分詰まらない株価推移になる事が予想されますし、粗利が改善したあたりで参入しても十分間に合います。
それが万年バリュー銘柄の宿命なのです =)。
成長しないまま現金をたらふく持ったままブクブク太って悪いおじさんたちに絡まれてブチ切れ上場廃止あたりを想定してシナリオを組んでみたものの、私のシナリオからは外れてしまいました。
悪い銘柄じゃないんですよええ。
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