2019年5月16日木曜日

4471 三洋化成工業 - 華咲く中小型 ('19/04)

華咲く中小型(スパークス・M&S・ジャパン・ファンド)まとめ

4471 三洋化成工業


おむつの素材を製造する機能化学企業です。京都銘柄。四季報の同業他社に住友精化[4008]第一工業製薬[4461]日本触媒[4114]


◆銘柄紹介
当月は、当ファンドの保有銘柄の一つである「三洋化成工業」についてご紹介します。

三洋化成工業は、界面活性技術に強みを有する機能化学品メーカーです。生活・健康から輸送機、情報電気に至る様々な領域に商品を提供しており、製品種は3,000超に及びます。同社は「パフォーマンス・ケミカルス」メーカーと自社を位置づけており、2011年の社長交代後は、高付加価値品へのシフトをより鮮明にしています。2018年には2027年度までを対象とする経営計画を策定するなど、組織運営体制の抜本的見直しに取り掛かりました。この「舵切り」により、特定商材に依存してきた同社の収益構造の変化が今後具現化する可能性が高いと、当ファンドでは考えています。既に複数の商品がニッチながら需要を伸ばしており、業績拡大のタイミングは近づいてきています。

一方、株式市場からは、過去数年間に亘り同社の業績を牽引してきた高吸水性樹脂(SAP)メーカーとしての位置づけが強く、前述の変化は見過ごされている状況にあります。ひとつの理由は、SAP(Super Absorbent Polymer、高吸水性高分子)事業の収益悪化懸念が高まっている点です。SAPメーカー各社が増産投資を行った結果価格競争が激化、同社も2018年10月にマレーシアで新工場が稼働を開始しており先行きは楽観視できる状況にありません。

しかし同社は、稼働率悪化による短期的な収益悪化を厭わず強気な価格設定を続け、事業ポートフォリオの改革を続けています。この動きは、単なる採算改善にとどまらず、関係強化できる顧客かどうかの選別が進んでいるという意味でもプラスだと考えられます。新規市場を開拓するには、メーカー側の技術力向上だけでなく顧客側の高度な需要を引き出すことが必要不可欠です。限られた経営資源をコモディティから高付加価値品に切り替えることで、資本効率の改善も期待されます。

新たな収益源として期待されているのは、潤滑油や塗料の性能を引き上げるための添加剤です。自動車向け潤滑油の添加剤は世界的な燃費規制強化を、塗料向けの消泡剤は顧客の生産性改善や環境規制強化を構造的な追い風として成長を続けています。どちらの商品も、それ自体が最終商品になるのではなく、パフォーマンスを引き上げるためのキーとなる「部品」のようなものと考えられます。数量的拡大から質的改善への転換が様々な市場において世界的に進む環境にありますが、構造転換が漸進的であることを鑑みるに添加剤市場の潜在成長余地は大きいと考えています。

同社にとってのリスクは、資源価格の急激な変動に伴う短期収益の悪化です。高付加価値品はコモディティ品に比し市況感応度は低いとはいえ、最終需要の変動や顧客企業の収益性悪化を通じて同社の業績にも影響を及ぼします。

化学セクターには大きく分けて総合化学と機能化学があります。

総合化学は、石油から様々な化学製品に必要不可欠なエチレン、エタン等を精製します。これらの材料から塩化ビニル樹脂やプラスチックに派生していきます。大規模なプラントを保有し、上流から下流まで一気通貫で製造する特徴があります。よって総合化学メーカーは売上高が大きい大企業が大半を占めています。

近年、アジアの国々に競合が増えており、利益が出にくい事業になっています。景気が悪くなると総合化学大手の住友化学[4005]三井化学[4183]の合併話が出てくるのですが最近は話題になりませんね。

化学セクター全般に言えることですが、原料である原油の価格によって業績が左右されやすい傾向にあります。精製するにも時間がかかりますのである程度の原料在庫を持たないとならない一方で、力関係から価格転化がしにくいセクターなのです。

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機能化学は、エチレン、エタンから半導体材料や製薬原料、化粧品などを製造します。これらの製品は、付加価値が高く(高利益率)競合が少ない特徴があります。競合が少ないので価格決定力があり、原料高への価格転化を飲ませる力があります。

日本は社歴の長い機能化学メーカーが多いように感じています。このセクター、装置産業であるので景気の影響を受けやすくコロッと倒産することが多いんですよ。今、生き残っている機能化学メーカーはかなりの経営ノウハウがあり、価格転化の飲ませる経営ができているところが多いようです。

ちなみに皆さんご存知の花王[4452]資生堂[4911]も化学セクターだったりします。

纏めると以下の通り。

  • 業績は石油価格に左右されやすいぞ!
    機能化学メーカーでも同様なのですが、総合化学メーカーよりはマシな程度。石油価格は概ねWTI(原油先物)に連動します。急激な価格変動は特に注意。業績が良くなったように見えて実は原料価格に救われていることがほとんどやぞ。
  • 売上は景気に左右されやすいぞ!
    花王や資生堂のようにコンシューマーに対して最終製品を持っている場合は影響が少ないのですが、大半の化学メーカーはBtoBで顧客は企業になります。特に半導体部材は高付加価値製品である一方で、需要が大きく変化する特徴があります。
    生産量を細かく制御するのが難しいので景気動向から遅れることが多いです。
  • 設備投資がすっげえ必要だぞ!
    常に設備投資が必要なセクターでもあります。この点では鉄鋼と同じく重厚長大な産業ではあります。設備投資のタイミングを見誤るとすぐ倒産ですからね。
    設備投資のタイミングは注視してください。

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で、三洋化成工業なんだけど、主力の高吸収性樹脂の売上が伸び悩んでます。この樹脂は、おむつや生理用品で使われる原料のひとつで、一時期は中国を中心として需要が急増してて活況だったのですが、直近では在庫調整のあおりを受けている状況のようです。

需要の見極めを間違って設備投資をしてしまった化学メーカーというのはかなりヤバイのですが、レポートでは他にも様々な製品があるので大丈夫って話のようです。

せやな(´・ω・`)

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