2015年6月6日土曜日

9824 泉州電業 - 今日の決算説明会さん

決算説明会(@gantky1)さん、まとめページ

9824 泉州電業


泉州電業は、電線を扱っている専門商社です。四季報の同業他社に5803 フジクラ5805 昭和電線HD5807 東京特殊電線






泉州電業は、昔からバリュー投資家に好まれる銘柄ですね。一時期、IRフェアに積極的に出展してまして、その時によく社長の西村さんのお話を聞いていました。元商社マンらしく、押しが強い感じでして好感を持ってます。

まずは財務から見てみましょうか。いつものB/Sの確認。GMOクリック証券の財務分析より。


商社らしく売掛金と買掛金の占める比率が大きくなっています。これは大量に買って少量で売り捌いて利ザヤを稼ぐという商社のビジネスの特徴でもあります。

まず注目すべきは売掛金ですね。

総資産に比べて売掛金の比率が高い企業で注意するのは売却先の安定性です。売掛金は、売上げたことにしているものの現金を回収できていないと言う状況です。回収できてこその商売ですので、売った先の与信が重要になります。例えば先日の江守HDの場合、顧客数が少なく特定の企業に対する売上が大きかったため、回収が出来なくなることが確定した時点で倒産となりました。


泉州電業は、数多の電気工事屋さんや製造業に販売しています。中には売却後、あえなく倒産してしまう企業もあるかもしれませんが、取引先の多さを考えれば事業全体で致命傷を受ける程ではないかと思われます。

次に買掛金に注目しましょう。

買掛金の多くは大株主である昭和電線HDです。ここで重要なのは取引先との信頼関係です。信頼関係が悪化すると手形の条件が悪くなり、現金による売買を求めてくるようになります。そうなると会社全体の資金繰りが悪くなり経営が悪化します。これは不景気ではよく見られる光景です。幸いなことに泉州電業と昭和電線との付き合いは長く、大株主であり、財務も極めて良好で、ほぼ無借金経営という状況なので、この心配は少ないかと思われます。

そいえば最近、花王が買掛金の条件を厳しくするという報道がありました。花王からすると資金繰りが良くなるのですが、関連企業からすると資金繰りが悪化する事になります。大企業の懐の深さを見せて欲しい所なのですが、不景気でないところが救いですね。


次は棚卸資産です。この銘柄のキモですね。

棚卸資産は電線のストックです。電線の商社なんだから当たり前ですよね。ただこの電線というのがネックでして、電線の価格は銅価格に連動します。どいう事か言うと、商社なので一定量の電線を手元に持っておく必要があるのですが、その手元の電線の価格は、最後に仕入れた電線の価格になります。電線は昭和電線から購入するという話はしましたが、この電線の価格は常に銅価格に連動します。

つまりですね。

銅価格が上昇すると、手持ちの電線の価値が上がります。電線の価値が上がると、棚卸資産が増加し、結果として粗利が向上し、利益が伸びます。面白い話なんですけど、売れたわけじゃないのに会計的に利益が増えるんですよ。

逆に銅価格が下落すると、手持ちの電線の価値が下がります。電線の価値が下がると、棚卸資産が減少し、結果として粗利が落ち、利益が減ります。面白くない話なんですけど、まだ売れてもいない電線を持っているというだけで会計的に利益が減るんです。

価格転嫁もするのですが間に合わない場合もあります。ある程度は銅価格の変動リスクを被るというのは商社のビジネス上、仕方のない所でしょう。

ここまで踏まえて改めてB/Sをみて欲しいのですが、手持ちの棚卸資産を最小限に保っているのが分かるでしょうか。売上(売掛金)が伸びても棚卸資産が一定であるのはリスク管理が行き届いていることの表れでしょう。

「会計的に」と言うのをしつこく強調してましたが、これはP/Lから判断するのが難しい銘柄ですよと言う話をしたかったからです。この手の銘柄は現金に注目します。銅価格がどう変動しようが、結果的に手元に現金が入る事が、安定した経営に繋がるのです。銅だけに。

フリーキャッシュフローをみてみましょう。


赤い棒グラフがフリーキャッシュフローにあたります。殆どの期でプラスになっているのが分かるでしょうか。

抜群の安定度です。

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扱っている電線は主に、電力用ケーブルと電子産業用ケーブルの2通りあります。電力用は、銅の使用量が多く銅価格に大きく変動します。汎用品ですので付加価値は付けにくく粗利も低いです。対して電子産業用のケーブルは、細線なので銅の含有量(?)が少なく多種多様なのが特徴です。泉州電業ではケーブルを加工し付加価値を付けて販売しており粗利が高いビジネスになっています。

電力用の需要はある程度は一定しており一定の収入源として期待できる一方、電子用は需要の波が大きく、不景気になると需要が極端に落ちる傾向があります。

と言う事で安定経営には電力用と電子用、2つの電線をバランスよく販売するのが肝要なのです =)。

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纏めると、企業の設備投資が増える状況ですと電子用ケーブルの需要が増える事になりますので、ビジネス環境は悪くないと判断しています。

銅価格の変動ではP/Lの見た目が思っている以上に変動するので気を付けた方がよいでしょう。銅価格の下落局面なら決算発表前までに売却し、決算後、傷んだ株価をメンテする感じで資金を入れるといい感じな場合が多かったですね。銅価格は銅先物で確認してください。

優待は1部上場目当てです。株主数が足りないそうなので協力したい人は協力してあげてください。どうしても1部上場したいんだとか。

成長株とは言いにくいものの、安定した成長性を持っており安定した配当を期待する分には悪くない投資かと思われます。PBR1倍割れは気にしていましたけどビジネス上、仕方がない部分もありますしね。


まあここまで語れるのは経営者の西村さんの受け売りからなんですけどね =)

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