2019年5月3日金曜日

【IR担当向け】IR担当が聞いてきた個人投資家が注目していること問答集

IR担当向け まとめ

※随時更新中

IR担当の方とIRの改善について話し合うことが多くなってきたので纏めておきます。何か伝えておきたいことがあればコメントください。フォローしておきます。


決算説明資料


要望:中期経営計画を公開してください


3~5年程度の中長期での目標を開示してください。

  • 目標数値を明確に
    数値のない努力目標的な開示は意味はないです。売上・営業利益の数値は分かりやすくオススメですが、自社のKPI(例えば従業員数、契約社数、出店数)でも悪くないでしょう。
  • IRサイトでの開示
    中計を目立つIRページに開示してください。折角、中計を公開しているのにその情報を探すのに数年前のIRページまで遡らないと分からないIRサイトがあります。決算説明資料に中計の進捗を記載するのと同時に、IRサイトの目立つ場所に専用のページを設けるべきです。

「長期的に株式を保有してほしい、というのなら中長期的にどう成長するかくらいは開示するべきだと思うんですよ。長期的な成長の方向性が見えない企業に投資したいと思いますか?虫が良すぎやしませんかね?」という話をよくします。

コーポレートガバナンス・コードに示されている通り、企業は中長期的な企業価値向上の方向性を株主を始めとしたすべてのステークホルダーに対して開示する努力をするべきだと思うんですよ。


要望:決算説明会での質疑応答を開示してください


機関投資家と個人投資家との情報格差をなくすために質疑応答の模様を公開してください。


最近、決算説明会での質疑応答の模様を開示する企業が多くなっています。情報の平等性からも重要であると感じています。未だに機関投資家だけにしか開示していない情報があるという話も聞いています。とてもよくありません。


Q. 決算説明資料のどこに注目をしてみているのでしょうか?

A. 「変化」に注目しています


決算説明資料に限りませんが、投資家は企業の「変化」に期待しています。小さな変化でも構いませんし、逆に悪材料も包み隠さず開示してもらいたいと思ってます。例えば、年末に向けて新製品を開発した、アジア地区で売上が伸びた、顧客層に変化が見られた、新工場の稼働状況、従業員の雇用環境、など。

逆に、事業の不安・懸念を先延ばししたり隠そうとするのはよくない傾向と感じています。19.01.17に日本電産が大きな下方修正を開示しましたが、その後の株価は堅調に推移しています。市場との信頼関係が結べている結果でしょう。

Topicとしてページの先頭に取り上げてみては如何でしょうか。

  • 株主投資家情報 - 決算説明会資料 - 信和
    信和の決算説明資料は経営環境や直近の減益要因をグラフにしてしっかり説明しています。よくできた資料です。IPO銘柄の決算説明資料はよく練られているので参考にしやすかと思われます。



Q. P/LやB/Sの情報って必要でしょうか?

A. 数字よりも内訳の説明が重要です


数値の羅列なら必要性は感じません。決算短信で十分ですからね。

最近の傾向としては、営業利益のウォーターフォール図が分かりやすくお気に入りです。以下はキトーの19/3Qの決算説明資料より。


資材価格高騰を値上げで補えているのが分かると思います。

四半期ごとの売上・営業利益も参考にする投資家が増えてきましたので添付することをオススメします。同じくキトーの決算説明資料より。


売上・利益とも4Q偏重なのが分かります。


Q. ESGとかSDGsって個人投資家はみてるものなんでしょうか?

A. 気にしていません


残念ながら個人投資家としては、業績に直結しない情報はあまり見ません。震災絡みでの活動を見ている人は若干いた程度でしょうか。

機関投資家の立場ですと、ESGやらSDGsに関する銘柄を必要とする傾向がありますので、決算説明資料のAppendix的なところに記載してあげると助かるかもしれません。詳細はIRページを参照する形にすると良いかと思われます。


Q. 決算説明資料って誰が一番見ていると思います?

A. 従業員です


IR担当の方から教えてもらいました =)。決算説明資料や動画のアクセスログをみると外部より社内からのアクセスが多いんだそうな。

決算説明資料は、投資家を意識して作成しているかと思われますが、さもあらず。実は従業員も会社の経営状況や方向性を知りたがってるんですよ。だから、従業員のためにも開示情報に力を入れてほしいと思うわけです。


Q. どの企業の決算説明資料が参考になりますか?

A. 私は日本電産のIR資料をオススメしています


日本電産の経営者である永守さんは、よく機関投資家のことを考えて資料を作成しています。決算の数値を読み解くためのヒントを記載し、大きく動いている数値については詳細に説明されています。

多すぎず、少なすぎず、投資家にとって重要な情報を開示するのがキモです。参考情報は資料の後に、Appendixとして添付する程度でよろしいかと思います。


対話的な決算説明資料としてはクルーズが興味深いです。資料としてもよく出来ているのですが、ちょっとアクが強いのがアレでしょうか。


全体的にですとIPO銘柄の決算説明資料は皆、良い出来です。IPOのロードショーで鍛えられているからかと思われます。ナウな資料を作成したいのならオススメです。

株主総会


要望:株主総会後に会社説明会を開いてください


これ、私の十八番です =)。

いや、実にもったいないんですよ。株主総会で集まった株主の人たちって明らかにこの会社に興味を持っている人たちでしょ?その人達を定型的な株主総会を済ませてそのまま帰すなんて、もったいない。

株主総会は、法で定められた会なので質疑応答に限界があるのは分かるんです。中長期的な経営についても語りにくいですし、そいう集まりでもない。うっかりな対応をしてしまうと後に訴訟リスクを追うことにもなります。

だから株主総会後に会社説明会を開いてほしいんです。会社説明会なら法に定められたものではないので口も滑らかになるでしょう。儀式的な行事よりも説明会のほうがずっと個人投資家が望むものと確信しています。

十八番というのは株主質問で「来期は会社説明会を開いてください」というお願いをしています。株主懇談会を開いてほしいというわけじゃないんです。タダ飯が欲しいわけじゃないんですよ(そう捉えやがったクソ経営者には絶対投資しねえ、覚えてやがれ)。仮に株主懇親会を開くとしても豪勢な食事ではなく、茶と茶菓子程度でいいんです。飯目的の懇親会は経営者とまともに話す機会が少ないし勘弁してほしいくらい。

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あんまり言ってないけど、結構実績があります =)。

先日、偶然にも私の提案を聞いてしまった企業のIR担当の方と話す機会がありました。上場1年目に株主質問で提案し、2年目で実行に移したんですね。それが結構、大掛かりというか執行役員総出で対応し、全員の意見が聞けるというまたとない機会でした。惜しむべきは参加者の少なさでして10人いたかどうか。増収減益だったので仕方のないところでしょう。ちょっと申し訳なかったかな。

IR担当の方が「あんな感じでよかったんでしょうか、、、」と聞いてきたので「少なくとも私は大満足です。参加人数が少なかったのは投資家の期待に沿えなかったからで、増収増益傾向になれば必ず株主は増えます。私も後数年は持っているのでそれまでに、業績を頑張ってください」と答えておきました。

また売れない塩漬け株が増えました、、、orz


Q. どのような株主総会が記憶に残りましたか?

A. 最近ですとパーク24の株主総会が良かったです


とっさに答えてしまいましたが私のお気に入りの株主総会のひとつです。

いい株主総会というのは、投資家から成長性に対しての積極的な質問が飛び出します。また経営者も自分の言葉で回答し、将来を見据えた経営計画を話します。会場では自社のサービスを説明する担当の方が熱心に解説してくれます。

今から考えるといちご[2337]もオススメです。いちごは毎年土日開催で、新橋駅からほど近いホテルで開催しています。早く現場に向かえば各事業担当の方が経営状況について答えてくれます。なんと言っても経営者であり大株主のファンド代表でもあるスコット・キャロンさんの話がまあ面白い。あの人、日本大好きなのがいいですね。

すこし話が逸れるけど、前々期に配当を株主の判断に委ねるべきだとの株主質問(三尊さんなんですけどね)に対して前期でさっそく株主判断に戻す決定をした経営判断の早さは素晴らしかったですね。

サイバーエージェント[4751]も捨てがたい。

他にも色々思い浮かぶのですが、またいずれ。


IRフェア・勉強会


Q. 参加する必要はありますか?

A. 若年層にもリーチができるのでオススメです


コスト面で折り合いが付かないことが多いようなのですが、リーチする年代層の広さからIRフェアに参加することをオススメしています。

証券会社主催の個人投資家向け説明会は、平日開催で参加者はノベルティ目当ての高齢者が多いです。おカネを持っているのは軒並み高齢者であるので間違いではないのですが、中長期的に会社を知ってもらいたいのなら若年層にもリーチするIRフェアの方をオススメします。

また毎年IRフェアに参加する必要性は少ないと思っています。数年に1回程度で、中期経営計画が策定されたあたりで参加すれば十分でしょう。後は決算説明会の動画などで補填できます。

最近、個人ベースでのIR勉強会や新しい形でのIRセミナーが広がっており、これも年代層が若いのでオススメです。機関投資家より厳しい質問が飛んできますよ =)。



IRページ


要望:個人投資家向けページを作ってください


どのような事業を行っており、強みは何か、社会にどう貢献していくのかを纏めたページがほしいです。

決算短信や決算説明資料では初見でのハードルが高いです。個人投資家がIRページで何を見るかというと「一体この企業は何をやっているのか?」を知りたがっているはずです。個人投資家向け資料をそのままIRページに流用しても構いません。目に付きやすく、検索に引っかかりやすいのを目標としてください。



要望:Q&Aページを作ってください


この話をすると真っ先に「証券コードは何番ですか?」「優待はありますか?」みたいなページを想像するかと思うのですが、断じて違います。つかあのページ、どこでも見かけるんですが見る人いるんですかね。

機関投資家や個人投資家が質問してきたので共有するべき情報ば、共有するページがほしいです。本来、IR情報で情報格差はあってはならないはずです。



要望:中期経営計画(中計)のページを作ってください


中計の専用ページを作ってください。

数年前に作成した中計が見当たらないことがよくあります。初めて訪れた投資家にも優しいIRページを心がけてください。中計は重要です。



要望:株主優待のページを作ってください


株主優待の是非については別にして、株主優待を出しているにも関わらず、IRページにその記載がなかったり見つけにくかったりするサイトがままあります(例えばエコナックとか)。

優待信者がIRページで真っ先にみるページが優待です。それはもうトップクオリティですよ。折角、優待を配っているのにその広報が上手く行ってないとかありえないですよ。もったいなさすぎる。

IRページのトップに、目立つところに、専用のページを作ることをオススメします。


株式売買


Q. 同業他社があった場合、セクターごと買うのですか?

A. 場合によりけりです


例えばセクターで業績の差が大きく見られない場合には、セクターを広く浅く買うことが多いです。広く浅く買うことで個別株のリスクを分散させ、セクター全体の成長を享受することを目的とします。例えばホームセンターとかでしょうか。

逆にアパレルや工作機械など、業績の差が大きく開きやすいセクターは個別株を選別します。エッジがあり勢いがある個別株を選択しています。


Q. 投資するときには流動性は気にしますか?

A. 私は1日の平均売買よりは買わないようにしています


これはマイルールであって、ポピュラーなものではありません。

流動性がない株は、いざとなった時に捌けないリスクがあります。捌き遅れると致命傷になる銘柄は特に注意して売買を行うことにしています。その指標のひとつとして、一日の平均売買高より保有しないというルールを設けています。

まあいつの間にか流動性が少なくなってしまうケースもあり、厳しくは守っていませんが。


情報源


Q. 何を情報源にして企業を探しているのですか?

A. 最近はYouTubeが多いです


最近はYouTubeをよく利用しています。

YouTuberを使って広告するケースが増えており、若年層あたりにヒットする傾向が強くなったと感じています。YouTuberがキャッキャウフフしているところにおカネの流れがあると注目しています。

またYouTubeを使って、決算説明会の模様を録画した動画を流すケースがみられるようになりました。再生数は大したことはないのですが、コストとしてはホームビデオが必要な程度なので非常に安価なIR活動としてオススメしています。



画質があまりよろしくないのを率先して選びました =)。いやこんなんでいいんですよ。

後、ログミーファイナンスの決算説明会の書き起こしは参考にしています。特に質疑応答の模様には注目しています。

私は会社四季報をそんなには重宝していませんが、今も個人投資家のバイブルとして健在かと思われます。


Q. 適時開示のPR情報ってみます?

A. 適時開示のPR情報はみれませんが、プレスリリース配信サービスをみる人は増えています


何を言ってるのかわからないと思うので説明します。

適時開示情報は何段階か別れています。東証が一般に公開されている適時開示情報(TDNET)は、開示に必要とされている情報のみ掲載されています。この他にPR情報という適時開示もあるのですが、この情報は有料となってまして公開情報として閲覧できません。

証券会社の適時開示情報でPR情報を見ることができます。

以下はマネックス証券の銘柄スカウターにて9424日本通信のPR情報のみ抽出しました。


かなりの数のPR情報を開示しています。この情報はTDNETには流れません。IRページには掲載されているかと思います。

ちなみに7203トヨタ自動車のPR情報はどうかというと、


全く活用されていません。

とまあ各社バラバラな対応でして、PR情報まで注目しようとは思えないんですよ。

むしろプレスリリースを投資情報の対象としている人がちらほら見かけます。東証のPR情報よりPR TIMESなどのサービスを利用したほうが役立つんじゃないでしょうかね。


IR担当向け書籍 (20.02.19追記)


楽天IR戦記 「株を買ってもらえる会社」のつくり方
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楽天でIR担当を行っていた方の書籍です。機関投資家との対話が非常に興味深いです。成長する過程で同じような体験をするかもしれませんので、前もって読んでおくと慌てずに済むかも知れません。

やや残念なのはほとんどのIR活動は機関投資家向けであって個人投資家との対話は僅かでした。時価総額100億円程度の規模ですと機関投資家に見向きもされません。ある程度までの時価総額に上げるには個人投資家へのIR活動が重要なのではないかと私は感じています。企業の成長とともにIRも成長する必要があります。

本書ではIRの目的を「株を買ってもらうこと」とし最終目標は資金調達にあるとしています。言葉足らずのところがあって誤解されやすいのかなと思いました。株を買ってもらうために手段を選ぶなってことではなく、適切な情報開示により適正な株価を維持するのがIRの目的と感じています。株価は高くても安くても不味いのです。本書でも適正価格についての記載があるので言わんとするところは分かります。

まあでも三木谷さんのパワフルさが目立ちますね =)。あそこまで成長させるにはああでないとダメなのでしょう。







2 件のコメント:

  1. この記事、最高じゃないですか。しゅぎょくイイです!!珠玉。。

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    1. あざます。思いつきで書いたんですが結構評判いいんですよねこのページ。

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