2015年2月8日日曜日

9963 江守GHD - おまえらのための財務分析

財務分析をするのにあたって面白いネタがあったので取り上げてみます。

かねてより“多額の売掛金”と“大幅にマイナスな営業キャッシュフロー”に定評があった江守グループホールディングス、期待どおり決算遅延を発表 : 市況かぶ全力2階建

記事で上げられている用語が理解できない人のためにチョイチョイ説明を入れていきます。

「おまえらのための財務分析」シリーズでは、GMOクリック証券の「財務分析」ツールを使ってキャッキャウフフするのを目的としています。操作方法については7412 アトム - おまえらのための財務分析を参考にしてください。




9963 江守GHD


江守GHDは、化学系の資材を扱っている専門商社です。四季報の同業他社に8012 長瀬産業8090 昭光通商8098 稲畑産業。化学系商社を集めた感じですね。

商社(問屋さん)のビジネスは「沢山買って小分けに売る」ことで利ザヤを稼ぐことにあります。

例えるなら、工場から120000本で100円/本の鉛筆を問屋さんが仕入れて、110円/本で12本単位で文房具屋さんに売って、その利ザヤである10円/本を利益として受け取るというイメージでしょうか。工場からすれば問屋さんが大量に購入してくれるので資金繰りに困らずに済みますし、小売店からすれば必要以上の在庫を持つ必要が無くなります。

近江商人の「三方よし」は、自分のビジネスモデルを考えりゃ当たり前って事になりますな =)

話が逸れたか。

商社の財務は、売上に対して薄利多売で、総資産に占める売掛金・棚卸資産・買掛金の比率が高くなる特徴があります。

  • 売掛金
    売っちゃったんだけど、まだ現金化出来ていない手形。現金化する前に取引先がバンザイするともれなく不渡り手形に。不渡り手形に価値はありません。
  • 買掛金
    買っちゃったんだけど、まだ現金を支払っていない手形。ちゃんと支払わないと黒字でも倒産扱いになります。
  • 棚卸資産
    商品のストック。在庫に価値があるのはビンテージものくらいしかないやね。特需による商機に対応するために多く在庫を持つことはあるはず。

売掛金の回収を早くし、買掛金の支払いを遅くし、在庫を少なく持つことが経営のキモとなります。この程度の知識があれば今回の話は大体理解できるはず。

今回問題になっているのはこのビジネスのキモである売掛金の安全性です。


株主価値



67%割安、という判断のようです =)。

株主価値の事業価値は、現時点での営業利益のみから判断しています。なので将来に渡ってこの利益が継続できる体力があるのなら67%割安と言うのも理解できます。営業利益が一時的なものであるなら、もっとディスカウントされるべきですし、逆に更に成長余地を残しているのなら67%以上の割安であると言う事になります。

資産価値、有利子負債も同様に現時点での評価なのですが、事業価値程には変化しません。

資産価値は、企業の総資産の規模によって決まります。総資産がいきなり増えるためにはどこからか資金を調達しなければ難しいです。そうなると株券を刷るかか銀行から借金をする必要があります。実績を伴わない増資や負債は無理です。有利子負債も同様です。負債が負債を生む展開もなきにしもあらずなのですが、急速に変化するのは稀です。つか銀行が受け入れてくれないでしょう。

今回のキモは事業価値の安定性です。安定性が確認できれば、67%割安も納得の結果になるはずです。


財務状況 (B/S)



B/Sは資産の流れを見るのがキモです。

まず目立つのは2011年あたりからの総資産(資産の全長)の急増、特に売掛金の増加でしょうか。モノを扱わないIT銘柄ではあり得ない話ではないのですが、モノを扱う商社では珍しい部類でしょう。これだけ急増させるには資金も必要なはずです。

企業にとって総資産は体重のようなものです。体重が増える事でビジネスの幅が広がるのですが、同時に足腰がそれに耐え得るかも重要なのです。体力にそぐわない体重の増加は、必ず怪我をします。注意しましょう。

そんなこんなにあたりを付けて決算短信や有価証券報告書や沿革をみていきましょう。

  • 2011年→2014年の躍進は中国での売上
    有報の「地域ごとの情報」を見ると主要取引国は日本、中国、タイでした。売上の内、6割は中国で、ここ3年間で売上を伸ばしたのは中国で、日本や他のアジアは大して増えていません。
  • 売掛金の多くは中国子会社
    有報によると売掛金の増加については「流動資産は、受取手形及び売掛金の増加などにより297億71百万円増加しました。これは、中国子会社の著しい取引高の伸長によるものであります」とありますので、売掛金の増加は中国なのでしょう。売上の増加と共に売掛金も増加させていったという流れですね。
  • '13/09に増資
    2014年に株主資本が増えた一因でしょう。基本、株主資本が増えることは嫌いじゃないんですが、増資は別です。増資は株券を増やす事なので利益の分け前が減る事を意味します。増やした株券以上の利益を早々に上げないと株主は許してくれないでしょう。

相当、中国依存が強い印象を受けました。この信用リスクに対して

中国事業における特定顧客を対象とする売掛金に対しては、国内貿易信用保険契約を締結し信用リスクの更なる極小化を図っております。

と有報にあったのですが'15/02の開示では保険会社から怪しまれて問題になったようです。どいう指摘を受けて保険金支払いを拒絶されたのでしょう =)

信用リスクの低減はこのビジネスのキモです。

例えば携帯会社で料金を支払わない顧客は一定数いるのですが、大量の顧客を相手にする場合、焦げ付く人数は安定する傾向にあります(大数の法則)。そうなると回収できない分を料金に織り込ませる事が出来るので経営は安定します。江守GHDの場合、顧客は少数で取引は大規模です。ちゃんとおカネを支払ってくれるかの信用を図る事が重要なのです。


キャッシュフロー計算書 (C/F)



CFも色々示唆する事が多いのですが、今日はフリーキャッシュフロー(FCF)経営という言葉を覚えて帰ってもらいます。キャッシュフロー計算書には、営業CF・投資CF・財務CFがあります。

  • 営業CF
    営業活動で得られた現金を表しています。一般的にはプラスが普通です。
    P/Lでは売上を上げたと経営者が決めた時点で売上として計上されます。対して営業CFの場合、売掛金が発生した時点ではマイナスになり、売掛金を回収できた時点でようやく売上から得た現金として認識されます。
    2011年からずっと営業CFがマイナスと言う事は、回収した売掛金より増加した売掛金の方が多いことを示しています。ここから示唆できることは2通り。売上のスピードが半端無く回収する時間すら無いか、もしくは回収できていない売掛金が残っているか、です。成長企業では前者もあるのですが、それでも数年営業CFがマイナスを続けている企業は稀です。
  • 投資CF
    投資活動で得られた現金を表しています。一般的にはマイナスが普通です。
    新しくお店や工場を建てると投資CFはマイナスになります。また経営とは関係のない投資をすると投資CFはマイナスになります。逆に経営と関係のない投資を利食いすると投資CFはプラスになります。
    投資CFは中身も確認しましょう。昔、万年バリュー株だった銘柄が急に投資CFを増やしたことがあって積極的な投資を期待したのですが、中身を確認してみたら「定期預金への投資」でした。アフォかorz。
  • 財務CF
    ファイナンスで得られた現金を表しています。
    借金するか増資をするとプラスになります。借金を返済するとマイナスになります。

上記の赤い棒グラフはフリーキャッシュフロー(FCF)と言って、経営で得られた現金を表しています。

フリーキャッシュフロー = 営業CF - 投資CF

FCFは、過剰な投資を行っていないかの確認に使います。

一般的に、営業CFを超えて投資を行うと例え黒字経営でも資金繰りが悪くなって経営が上手く回らなくなります。FCFがマイナスの場合、資金繰りが上手く行かず、また銀行もそれを見込んで借金の額を減らしてくる可能性が高いのです。

FCFが常にプラスであることを目指す経営は、会社の永続的な存続(ゴーイングコンサーン)に繋がることとされ、経営学では特に重要視されています。設備投資が必要な産業は特にこのFCFがプラスであることを確認しましょう。


まとめ


今回の件は事件か事故か、どちらでしょうか。事件は売り、事故は買いという格言がありますけど姐さん、それは(ry

つまり売掛金を回収しようともしていないから認識していない、ということでしょうかね。回収する気があればまあこんな感じの売掛金ですのでナンボか回収できていないのがあるはずでしょう。それとも端から保険ですべて賄うつもりだったんでしょうか。

分かりません><

売掛金が増えればそれが一定数焦げ付くことを考慮して引当金を積む、というのが一般的という話です。でこの引当金を全然積まないのはリスク要因として焦げ付くわけがない、焦げ付いたら保険が助けてくれるに違いない、という経営者の認識なのでしょうか。

保険、大丈夫っすかね><

銀行から長期借入が拒絶され、短期借入に切り替えさせられたって事でしょうか。かつてシンジケートローンで一社が立ち去ると蜘蛛の子を散らすが如く資金が回収されているアレを思い出します。

金貸しは血も涙もありませんね><

グルグルというのは魔法陣のことでして、自作自演気味の子会社たちが循環するが如くグルグルと魔法陣を描く様の事を指しているのでしょうか。

助けて勇者様!><

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一度、グルグルに手を染めてしまうとそこから抜け出すのは困難とされています。グルグル使いのソウルジェムが濁ると魔女になって手が付けられなくなるのでしょうか。もう自分でも何を言ってるのか分かっていません。

よく分からない銘柄は触れないことがいいんじゃないかな、と言う事だけは言えそうです。

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