2018年12月24日月曜日

4384 ラクスル、7805 プリントネット - '18/10の「担当ファンドマネージャーの見方」

大和住銀日本小型株ファンドまとめページ

4384 ラクスル


ラクスルは、ネット印刷を提供するサイト「ラクスル」を運営する企業です。'18/05上場。四季報の同業他社にアスクル[2678]共立印刷[7838]

7805 プリントネット


プリントネットは、ネット印刷を提供するサイト「プリントネット」を運営する企業です。'18/10上場。四季報の同業他社にラクスル[4384]共立印刷[7838]


<広告先行型ビジネスモデルへの懸念>

最近、電車やタクシーに乗って感じるのは、クラウドサービスを中心とする法人向けの広告が実に多いということです。ネット利用の成熟化や好景気、人手不足などの要因で成長が続いている分野だからでしょう。動画ではコメディアンを起用したインパクトのある作りのものが多く、たしかに頭には残ります。しかし、本当にみな先行投資を回収できるのか、という点では不安も感じられます。今回はそういった視点から、今年上場したラクスル(4384)とプリントネット(7805)を比較してみます。

ラクスルは印刷ネット通販市場2位で、自らは工場を持たないファブレス企業。前々期は売上高の18%を広告に投入して赤字、前期は7%に絞り込むことで、わずかながら黒字に転じました。積極的な広告の効果で、前期は40%を超える増収を達成しました。時価総額は今期会社予想売上高の6倍を超えています。

同社の最大の外注先がプリントネットです。単価の安いラクスル向けで稼働率を稼ぎつつ、ラクスルよりはるかに歴史の古い自社のネット通販を緩やかに伸ばすことで、利益を伴いつつ成長を続けてきました。前々期(前期決算は未発表)の広告費は売上高の3%に過ぎず、営業利益率は9%台。ラクスル向けを除いた増収率は4%でした。時価総額は前期会社予想売上高の1.2倍に過ぎません。

どちらの立場をより魅力的に感じるかは人それぞれでしょうが、広告先行型のビジネスモデルに関しては、広告費率を下げたときに増収を維持できるかという点でリスクを抱えていることは否定できません。競合企業との関係もありますし、市場が大きくなるとより体力のある企業が参入してくることもあり得ます。将来収益の確実性を左右する最大の要素は既存顧客の持続性でしょう。この視点から、プリントネットはコールセンターを充実させ、細かな問い合わせに対応することで差別化を図っています。

実は12月初旬にこのページを書いていたのですが、プリントネットの決算発表後、彼らの成長戦略により大きく株価を下げたので決算説明資料が公開されるまで待ってました。

以下はプリントネットのビジネスモデルです。


従来型の一気通貫で印刷業務をこなすビジネスモデルになります。7割は他社からの下請けであり、その中にはラクスルも含まれていると思われます。

以下はラクスルのビジネスモデルです。


ネットサイト「ラクスル」を通じて印刷物の販売のみを行っています。顧客からの受注を受けると、印刷工場を持っている企業に発注をかけます。このビジネスモデルは、数多の印刷工場とリンクすることで、稼働率が低い工場に安価で発注できる利点があります。工場側も稼働していない設備があるよりかは安価でも受注した方が得です。逆に印刷工場がECサイトを構築するのは人材やコスト面で至難の業です。

Win-Winではあるのですが、下請けに徹すると買い叩かれ続ける面は無視できないでしょう。プリントネットは、自力でECサイトを構築しているところに強みと弱みがあります。

--

ラクスルの弱みは増大する広告費でしょう。

ネットの印刷サービスを知ってもらわないと、そもそも受注が来ません。サービスを利用してもらうためにも多大な広告費とサービスが必要になります。一方でプリントネットのような後続組は、そのおこぼれを頂戴できるので広告費を抑えることが可能になります。

1Qの広告費を見てみましょう。


前年と比べると随分抑えられている割に売上が落ちていないことが分かります。前年度の3Q-4Qの売上を見ると飛躍的に上昇しているのは上場効果かもしれませんね。

上場後、2年目の年は経費を抑えると株価が安定する傾向にあるのですが、それを狙っているのかもしれません。

--

プリントネットの弱みは多大な設備投資にあります。今期減収予想の原因は「TVCM等の広告宣伝の再開」と「生産キャパシティの増大(向上稼働率を下げる)」とあります。

印刷業といえども製造業ですので、継続的な設備投資は必要不可欠です。特に成熟期後半で衰退気味であるので、積極的に設備投資ができるのは強みではありましょう。

とはいえ。過剰投資になれば当然、利益は減ります。広告だって上手くいくとは限りません。

上場2年目に投資期を持ってくる素直な企業が結構いますけど、下手をすると上場ゴール扱いになり必要以上に株価を下げることになるのでこのあたりの舵取りは難しいところだとは思います。





0 件のコメント:

コメントを投稿