2018年12月11日火曜日

営業利益と経常利益との間にある投資アイディア - おまえらのための株式投資

おまえらのための株式投資まとめ

茶番


「PERが低いんですけど評価されないんです><」

知らんがな。つか君らはいつも突然やな。


日経平均のことならEPSは上っているから、PERが低いってことは株価が下がってるってことじゃね?株価が下がってるのはなにか嫌われてる要素があるんだけど、そもそも今の相場で積極的に買いたい投資家が少ないってのもどうかと思うぞ。

え?個別銘柄?銘柄は何?

ライクキッズネクスト[6065]なんですけど、、、」

なるほどね、それはPERの質で嫌われているかも知れんね、、、


方針


営業利益と経常利益との間に大きな差がある銘柄を取り上げます。

本来の利益である営業利益よりも、営業外損益の影響を受ける経常利益の数値が大きい銘柄があります。このような銘柄は、他の銘柄より長期で稼ぐ力が弱いと判断され株価がディスカウントされる傾向が強いです。

しかし、よくよく精査すると経常利益が大半を占めている場合でも利益の質が高い銘柄もあります。

今回は具体例を挙げ、どのような視点で取り組んだら良いのか検証します。


経常利益とは


経常利益は、本業で稼いだ営業利益から、本業以外の損益である営業外収益・営業外費用を足した数値です。

営業外収益は、通常の営業で生じたわけではなく常に生じる収益とは限らないので、ここで得られた利益の質は低いと判断されることが多いのです。

逆に営業外費用は、通常の営業で生じたわけでもなく常に生じる費用とは限らないので、ここで失った一時的な損失は長期的にみれば問題は少ないと判断されます。

これを頭に入れておいてください。


ライクキッズネクスト[6065]の場合


18.12.10に開示された2Q決算をみてみます。


前期と比べると経常利益で減益になってるのを嫌気されてか、翌日▲24.43%となりました。今期の業績予想をみてみます。


どうやら毎年、経常利益に依存した利益構造のようです。これが今回のPERのディスカウントのカラクリです。

ただしここで思考を止めるべきではないんです。本当に営業外収益は一時的なものだったのでしょうか、検証しましょう。

P/Lの詳細をみてみましょう。


正解は設備補助金収入でした。

6億円程度の営業利益のうち、設備補助金収入の4.5億円の収益減ですので影響は大きいでしょう。

では設備補助金とはなんでしょうか。以下は2Q決算説明資料より。


どうやら自治体からのもらえる助成金のようです。設備補助金という項目から施設を開設したタイミングで支払われる助成金でしょうね。それ以外の、保母さんに対して支払われる助成金は売上に盛り込んでるのかな。このあたりは聞かないと分からないですかね。

2Q決算短信には以下の記述があります。


施設が稼働した時点で1億円程度の助成金がもらえる仕組みなんでしょうね。で、今回は1施設しか新規に稼働していないので助成金ももらえませんでしたってことでしょう。

まあよく考えてみてください。保育施設を新規に稼働させるのなら親御さんの移動がある3月末がぴったりでしょう。前期は多分、9月開園が多かったので補助金が固まってもらえた、と。よって概ね計画通りに進んでいるのではないかと思われます。

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マネックス銘柄スカウターで四半期業績の推移をみてみましょう。


営業利益のグラフと経常利益のグラフの差が興味深いです。4月開園、つまり4Qに補助金が集中するのが見て取れます。

更に興味深いのは、ここ直近の数年間の4Q単体の営業利益はほぼ赤字に近いことでしょうか。これは開園に伴う人件費の増加や設備投資が嵩んだ結果と思われます。ここ数年は人件費に苦労してそうですね。

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ここで問題になるのは補助金の恒久性です。


首都圏近くの待機児童はまだ高水準のようですので、しばらく補助金は期待できそうです。

が、いずれにしろ補助金がなくなることは想定しなければならないでしょう。また保育事業はNPOや社会福祉法人などが競合になりますので、彼らよりより効率的に経営することが課題になるでしょう。

保育は労働集約型のビジネスです。保母さんの能力に期待するには限界があります。彼らが働きやすい環境を整えることが急がれます。

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ここまでみてきて▲24.43%も下落する必要があったのか、疑問が残ります。経営の質云々より投資家としての質が問われるでしょう。仮に最近流行りの進捗率投資の影響であるなら、明らかに馬鹿げた売買であろうことは理解していただきたく。

一方で、補助金を利益として計上するのはどうなんだろう、と思うことがあります。補助金の意図からしてみて、それを株主の配当にあてがうのは本当に正しいんでしょうかね。なんか悶々とするんですよ、この手のビジネスは。


岩塚製菓[2221]の場合


岩塚製菓は米菓国内3位の食品業です。前期の本決算をみてみます。


この銘柄も常に経常利益が大きい銘柄です。マネックス銘柄スカウターでみてみます。


常に営業外収益が営業利益を上回っています。なんということでしょう()。


四半期で見ると興味深いことに1Qと3Qに営業外収益が集中しています。実はこれがヒント。

P/Lの詳細をみてみましょう。


正解は受取分配金でした。

岩塚製菓は、中国の米菓である中国旺旺グループに技術提携をした際に資本提携をしています。この時の株券からの配当金が受取分配金です。

岩塚製菓との出会いをなくして、今の旺旺集団の発展はないと言っても過言ではありません。

1977年、当時の旺旺(前身の宜蘭食品工業)は水産加工を営んでおり、家業を継いだ蔡衍明氏は北海道によくイカの仕入れに来ていました。蔡氏が当時日本で売られていた岩塚製菓の「サンフレンド」にほれ込み、岩塚製菓の創業者で社長だった槇計作氏に技術協力を仰いだのが、旺旺と岩塚の出会いのきっかけでした。
-- 岩塚製菓×旺旺集団│旺旺・ジャパン株式会社

つまり、育ての親を超えたんですね。中国旺旺グループはその後、売上を伸ばし上場までこぎついています。


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ここで問題になるのはやはり利益の質でしょう。

残念ながら本業である米菓はあまり成長は見られません。今後も国内でナショナルブランドとして成長するのは難しいと思われます。コンビニと組んでプライベートブランドとして売上を伸ばすとかしないと難しいでしょうね。

とはいえ。持っている株券には魅力が高いでしょう。

ここまで言えばわかるでしょう。仮に岩塚製菓に投資するなら中国旺旺グループの成長性と株価と配当に注目することで業績の変化を先取りすることができるのです。そいう銘柄なのです =)。

余談ですが岩塚製菓、ひふみ投信に組み入れられています。多分、投資目的は上記のとおりなはずです。彼らのレポートによると岩塚製菓自体の成長性に期待した、らしいのですが何をおっしゃってるのやら =)。


ニッタ[5186]の場合


ニッタはベルト・チューブ等のゴム製品を製造する企業です。前期の本決算をみてみます。


当然、経常利益が大きいんですね。まあそいう特集なんで。

マネックス銘柄スカウターでみてみます。


この銘柄は営業利益も伸ばしていますが、経常利益がそれを嵩上げしています。

P/Lの詳細をみてみましょう。


正解は「持分法による投資利益」でした。

ニッタは、持分法会社に強力な企業2社を持っておりその利益が嵩上げをしています。


どちらも49%の保有比率だと記憶しています。IR担当に子会社化は検討していないのか聞いたのですが、先方もあるので今のまま持続したいとのこと。なんというか、会社全体に人の良さを感じます。いいのか?この資本社会で。

ここで特筆するべきは18/05に発表した中期経営計画でしょう。


いやゴム事業でこの伸びは無理筋じゃね?と思って以前、IR担当に聞いてみたら持分法会社に頼ることなく自力成長を目指しているんだとか。

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ここで注目すべきは利益の質、ではなく本業の伸びでしょう。

本当に実行できるかどうかは分かりませんが、上記の持分法企業をみる限り、ゴムを活かした技術開発に自信を持っているのではないかとみています。

余談ですが、ニッタは隠れ資産バリュー銘柄でもあります。

社歴が長く、東京と大阪の高立地な場所に会社があります。土地も持ってるらしいので、それなりの資産になるでしょう。また戦前、ゴムを生産するために北海道に広大な土地を保有しています。この土地もそこそこの資産になるそうですが、今の所、株主優待で配られているバターなどの酪農を行っているそうです。

(追記:19.01.08)


2 件のコメント:

  1. こうやって比較してもらえるとすごいわかりやすいですね。
    ニッタちょっと気になります。本業の伸び部分がどこまで本当に伸びていくか見守りたくなりました。
    良い悪い別として人の良さがある会社って嫌いじゃないです。^^

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    1. ニッタは多分、ベースとなる技術が強いんだと思ってます。他に繊維系の銘柄も半導体でえらい稼いでいたりしますし、素材系というのは案外面白いんじゃまいかと。
      社風に共栄の伝統があるのかもしれません。

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