勝間和代
武田ランダムハウスジャパン
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ブログを爆破する度にこの書籍の読書感想文を書いている気がします =)。
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この書籍が出版されたのは丁度、粉飾が大きな社会問題になっていた時期でした。
当時も会計を扱っている書籍は数多く出版されていましたがどちらかというと簿記の延長上であって企業価値を判断することには触れていませんでした。会計本は簿記、ファイナンス本は経営者向けで、投資家向けの会計本は皆無に近かったんじゃないでしょうかね。
本書籍は、証券アナリストの経験から会計の裏側に隠れている意味を読み取る方法について記載しています。投資家目線で、読むべき会計項目を絞っているのも魅力的です。
ざっくり本の内容を抜き出すと以下の通り。
- 「利益」は操作できる
脱法っぽいのから様々ありますが、フツーの会社でも利益の操作はフツーに行われています。例えば儲かった期に設備投資をして節税効果を狙ってみたり、期の挟む手前で在庫を処分して利益と相殺してみたり。
P/L上の利益は経営者が見せたい状況であって本来の企業の実力ではない場合があるのです。 - キャッシュフロー計算書(CF)重視
CFは、財務諸表の現金の部分に注目し、どのようなおカネの流れになっているか、ざっくり確認するのに向いています。
CFは、P/Lと比べて操作しにくい傾向にあります。現金の流れに注目すると思ってたよりも現金を産み出していないケースは多々あります。例えば製薬メーカーは、新薬の利益率が飛躍的に高い事業ではあるのですがその分、新薬開発に多大なる研究費や先行投資を費やす必要があります。結果的に安定して現金を得ているかどうかはビミョーなケースがあるのです。
#もちろん騙す気でいる場合はまたアレなのですが、、、 - インチキ利益の作り方
会計上の利益を作るための方法が色々紹介されています。これらの例を知っておくだけでも財務を見るのが楽しくなること請け合いです =) - 財務の変化の流れに注目
B/Sを大きくして売上が伸びてないとかやっぱり気になりますよね。売上が伸びても売掛金がそれ以上大きくなっているケースとかやっぱり微笑ましいのです。この手の見るべき場所を知っていると数多く財務諸表をこなせるようになっていきます。 - 監査法人、重要
監査法人次第で財務諸表の信頼度が違う。どの監査法人が要確認なのかはナカナカ言いにくいのですが、一般的に信用度が高いと言われている監査法人は企業を数多く担当している場合が多いです。見慣れない監査法人の場合、その監査法人が扱っている他の企業も見てみましょう。作業を繰り返していくうちに勘が良くなります =)。 - Y社は信越化学、小売大手X社はイオン (ネタバレ)
繰り返しになりますが、投資家として見るべき項目を絞っている点で、今でも高く評価できる書籍だと思っています。
会計の知識が全くなかった時期にこの書籍を読んだので色々試行錯誤しました。5年前に書いたチェックリストを再び張ってみます。いやー俺、頑張ってたうん。
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- 対象会社の決算書(最新の期と1期前)
- 同業他社(2社以上)の決算書
- 会計発生高 = (当期純利益+特別損失-特別利益)-営業キャッシュフロー
大きいほど利益の質に問題有(p55)。 - 総資産経常利益率(ROA) = 経常利益/総資産
継続して下がるようだと利益の質に問題有(p58)。売上げが伸びれば規模の経済性が働きROAが下がるのが一般的。
- 今後どのくらい成長するか?
- 規制産業か?
- 規模の経済が働くか?
- ライバルにない強みを持っているか?
- 強みはどのくらい参入障壁になるか?
- 会計処理方法の変更はないか
- 営業キャッシュフローはコンスタントに伸びているか
- 投資キャッシュフローは営業キャッシュフローの範囲内か
- 営業キャッシュフローは営業利益の60~120%に収まっているか
「営業キャッシュフロー/営業利益」で求める。減価償却費が多い製造業は値が大きく、サービス業は値が小さくなるのが一般的。 - ROA(総資産経常利益率)は伸びているか
「ROA = 経常利益/総資産」で求める。 - 売上高、営業利益、経常利益はバランスよく伸びているか
売上高が伸びれば、それ以上に営業利益も伸びるのが一般的(規模の経済性による)。営業利益率が減っているようだと要確認。
- 自社にとって都合の悪いことにも言及しているか
- 増収増益を自慢していないか
- 新規事業を計画しているか。しているとすれば、それは既存事業のノウハウを活かせる事業か
新規事業には注意が必要。 - 具体的な数字が載っているか
あいまいな表現に注意。
- 売掛金・受取手形の額がふくらんでいないか
- 棚卸資産の額がふくらんでいないか
- 繰越税金資産はどのくらいあるか
- 有形固定資産の額はいくらか、償却方法は定額法か定率法か
- のれん代の額は大きくないか、償却期間は何年か
- 繰越資産という項目があるか。あるとしたらどのくらいの額か
- 引き当て欣也前受収益などが少なすぎないか
- 社債、とくに転換社債を発行していないか
- 利益余剰金は資本金・資本余剰金とくらべて小さすぎないか
- 純資産の部の大半を評価差額金が占めていないか
- 新株予約権が多額に発行されていないか
- 少数株主持分が過大でないか
- 営業利益は同業他社にくらべて図抜けて高くないか
- 特別利益・特別損失の額と項目数は多すぎないか
- 法人税は40%前後になっているか
- 営業キャッシュフローは売上高や営業利益に照らして適切か
- 投資キャッシュフローを自社への投資に使っているか
- 財務キャッシュフローはプラスかマイナスか
- 当年度に変更項目はあるか
- 減価償却は定額法と定率法のどちらを採用しているか
- 無形固定資産(とくに連結調整勘定やのれん代)は何年償却か
- 担保、偶発債務、買った会社の内容、後発事象など、気にかかる記述はないか
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