ネットや他人の情報やを頼りにするのではなく、会社が公開する決算短信や有価証券報告書(有報)から会社の価値を確認する癖を付けるのは結構重要かと思って纏めているものの、このシリーズ、PVから察するにかなりの不人気である。
自信無くすわあw
PERの使い方
株券1枚当たり、年間でいくら儲けられたのかを示すのが「1株当たり当期純利益」で、現在の株価と比較して数値にしたのがPERになります。
PER = 株価 ÷ 1株当たり当期純利益 (EPS)
株券には利益から配当を得る権利があります(利潤証券)。
例えばPERが1倍だとしたら、1年で株券の価値分を稼いだことを示すことになります。1年で稼いだ純利益の全てを配当に回したとすれば、配当だけで株券購入費が捻出できる訳で、2年後以降は、おカネを産み出してくれる金の卵を産むガチョウ状態になって大変お得なのです。とはいえ実際問題としてPER1倍はまず無いですし、純利益を全て配当に回す経営方針もほとんど見られません。
PERは「PER1倍は無いにしろ、PER5倍は許せるがPER10倍にもなるともう許せない」という絶対な価値で判断する使い方もあります。
一方で、同じような商品を売ってる3088 マツモトキヨシHDのPERは13.7倍なのに9989 サンドラッグのPERは19.8倍とかどう見てもマツモトキヨシは安いよね、という相対的な価値で判断する使い方も出来ます。
マツキヨの成長が止まっているので本来なら配当性向を厚めにしなければならないはずなのに配当性向が低いのが不満だし、一方のサンドラッグの成長は随分長く継続しているのでその分の期待値が株価に上乗せされていてちょっとお高い状況になっているようにも見える。ドラッグストアという業態は安定しているし利益率も悪くないのでやや高めのPERになるのは仕方のない所でしょう。今後は残っているパイの取り合いになるかM&A合戦になるか、そんなこんなのPERに見えますが今回の話とは別だ。
株主にとっての純利益は、株券の権利そのものなのです。年間でその権利をどの程度得られるのかがPERで、その利益の根源には配当が密接に絡んでいます。
1株当たり当期純利益(EPS)の使い方
EPSは純利益を株数で割って求めます。
EPS = 当期純利益 ÷ 対象株式数
EPSで重要なのは対象株式数です。この数値が経年で変わらないのであれば純利益だけの比較で問題ありませんが、最近の傾向としては結構、対象株式数の変動が多くなっています。
対象株式数が増えるとはどういうことか。
一般的なのは「増資」や「新株予約権の権利行使」でしょうか。株数が増えるということは、株券1枚当たりの価値が少なくなることを示します。増資によって純利益が増えたとしても、増資で増えた株券以上の純利益が確保出来なければ既存株主からすれば不満でしょう。単に純利益が伸びているだけでは株券の価値を測定することはできません。
逆に対象株式数が減るということはどういうことか。
一般的なのは「自社株買い」でしょうか。自社株買いした株券は、株券の権利を失いますので実質、株数が減ったものと考える事が出来るでしょう。株券を消却することで発行株式数が減ることになるのですが、実益としては自社株買いの金庫株で十分なのです。ちなみにEPSを求める時には、自社株買いで買い集めた株券は対象になりません。
自社株買いでPERは改善するのです。
潜在株式調整後1株当たり当期純利益の使い方
PERの算出には関係が無いのですが、パッと見で便利です。
潜在株式とは、発行株数としてカウントされていないが、状況次第では株数が増える予定のある株のことです。具体的には以下の通り。
- 優先株
- ストックオプション
- 転換社債(CB)、MSCB
「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」は、上記の権利が全て遂行された時の株式数を加えて算出されたEPSになります。
不用意に低いPERの銘柄をよく確認すると「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」では相当高くなって同業他社と大して変わらない、というケースも多々あります。長期で観察していないと潜在株式は気が付きにくいものです。是非、活用しましょう。
決算短信の1ページ目に記載されています。
キトー H25決算短信 |
僕らのキトー、少々ファイナンスしてますね。
ここ数年、役員報酬を抑える代わりに新株予約権を発行している状況が影響しています。役員報酬を全部合わせても1億円行かない状況ですので、この辺は是非加味していただきたく。
シンニッタン H25決算短信 |
僕の心が痛まないシンニッタン。何のファイナンスもしていないようで、いい会社ですね =)
マツモトキヨシHD H25決算短信 |
上記で偶然見ていたマツモトキヨシ。状況を知らないのですが結構な枚数の潜在株式があるようですね。流石にこれは気になる数値でしょうか。
長谷工 H25決算短信 |
優先株ときたら長谷工でしょうか。見た目以上のインパクトがあります。
PERのまとめ
「配当の原資」と「同業他社との比較」の2通りの使い方があります。
配当を出す株券を安く買うには、低PERでかつ利益に持続性のある銘柄を選ぶ必要があります。
- 高PERで配当を多く出す銘柄
配当の持続性に無理が無いか検証する必要があるでしょう。利益を持続し、かつ高PERを保つことが確信できるのなら問題ないのですが、得てして高PERは将来の期待を先取りしている場合が多く、それが失われると株価は下落します。 - 配当にムラがある銘柄
配当の原資は純利益です。利益に応じて配当する方針の企業が殆どです。景況敏感株と呼ばれる業態ですと、景況次第で売上が大きく変わりますし、利益も変動します。このような銘柄では例え低PERでも毎年、配当が上下しますので、安定配当は期待できません。経年で持続的に利益を出せる銘柄を選ぶ必要があるでしょう。
PERで同業他社を比較するには利益の質に注意する必要があります。
- 一時的な理由で利益が出ている銘柄
保有土地や有価証券の売却益等は、来年以降継続できる利益ではありませんのでPERでの比較は意味が薄いです。利益を出し続けることのできる本来の実力値ではない数値は排除して比較する必要があるでしょう。一方で為替による一時的な利益の増減は同業他社も同様の影響を受けていると思われますので気にしなくて大丈夫かと思われます。
具体的には営業利益を中心に比較する事になろうかと思われます。 - 会計的な理由で利益が出ている銘柄
利益は操作できます。多かれ少なかれ様々な理由で利益は操作されます。酷いのになると法に触れることになりますが、それは別の話。分かりやすいのは税金でしょうか。税金を多く払っている銘柄もあれば節税効果を狙って税金をあまりおさめていない銘柄もあります。この手の操作は毎年継続的に続けることはできませんので、これらを除いて比較する必要があるでしょう。
具体的には税金面ならEV/EBITDA倍率等を用いることになろうかと思います。まだ色んな会計操作がありましてその辺の見極めとか言い出すとまた結構楽しい話になるのでいずれまた =)
自分の投資法で使い分けておくんなまし、というのが今回のまとめ。
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